日本では「定年までひとつの会社を勤め上げる」というのは美談になりがちだ。元日本マイクロソフト社長の成毛眞さんは「これからはどんな大企業でも、定年まで大過なく過ごすのは安全でも無難でもない」という。冨山和彦さんとの共著『2025年日本経済再生戦略』(SBクリエイティブ)より一部をお届けする――。(第2回)
大企業の社員の転職が少ないのは問題である
仕事というものの本当の意味と価値を今こそ問い直せ、という冨山さんのメッセージは、多くの読者に響いたことと思う。
加えて、自分に向いているかどうか、自分が楽しいと思えるかどうかも、やはり職業選択において重要である。しかし、これが自分でわかっているようで、意外とわかっていないものなのだ。
そこで思うのは、大企業の社員の転職が少ないのも問題ではないかということだ。30歳くらいで最初の転職、45歳で2回目の転職と、最低2回の転職をしたほうがいい。なぜなら、業種や仕事に合うか合わないかは、1社で働いただけではわからないからだ。
楽しく働くには、能力よりも、相性や適合性が大切だ。たとえば接客営業に向いていない人が店頭に立つ、事務仕事に向いていない人が間接部門で働く、どちらも同じくらい地獄だ。
実は海運がおもしろそうだと思っていたのに、たまたま新卒で採用されたのがメガバンクだけだった、などのミスマッチも、あちこちで起こっているだろう。
自分に合っていない場所で毎日働かなくてはいけないことほど、苦しいものはない。
自分に合っている場所ならば毎日が楽しく、生産性も上がりやすい。だからこそ、自分に合ったところを求めて、もっと自由にビジネスの世界を回遊していいと思うのだ。