支持率アップより党内融和人事
安倍晋三元総理が銃弾に倒れ、早1カ月。安倍氏と旧統一教会との関係があぶりだされ、安倍派の多くの議員が旧統一教会から支援を受けていたことが連日明らかになっている。世論調査では、国民の8割以上が旧統一教会と政治家との関係を明らかにすることを求め、新型コロナの感染者が連日10万人を超える中で、岸田政権は、今月に入り支持率を一気に10ポイント下げ5割を切った。
当初は「そんな状況を打開するため」内閣改造を行うことになったと見られていた。秋と目されていた改造を早めたのは、支持率が急激に下がり、旧統一教会との関係があぶりだされる内閣において、そうした関係のある閣僚を一新するためだと。
しかし、内閣改造の結果を見ると果たして、「状況を打開するため」だったのかというとそうではないように思える。きわめて、「党内融和型」の党内向け人事であり、旧統一教会との関係が明らかになった新閣僚も散見されるためだ。
さらに、旧統一教会との関係が最も濃いと見られている岸信夫氏が引き続き、安保担当補佐官として官邸に入ることからも、岸田総理の腹づもりとしては、旧統一教会との「これまでの関係性」は致し方ないが、「これからの関係性」については、しっかりと対応する、入閣する人からもそれを了とする言質を取ることで、了承することにしたのだろう。そうしたプロセスからは世論対策という側面は感じられない。
共産党の小池晃氏は記者会見で「今回の内閣や党役員人事では、旧統一教会と関係のある議員もいる。つまりは、自民党には関係のない議員がいないということの表れではないか」と発言をしている。
しかし、私も議員時代、旧統一教会側から支援はもらっておらず、自民党内で支援を受けていない議員も数多くいるはずだ。実際、支援を受けてきたかどうかについては、その線引きが難しい。調べようにも、すべての祝電や代理出席の記録が残っているとも限らない。
旧統一教会との関係が深い議員は安倍派に多く存在するため、安倍派を閣内や党役員から一掃するという強硬手段に出れば、支持率はアップしたかもしれないが、安倍派から大きな反発を受けることは目に見えている。
しかも、野党にも旧統一教会とのつながりのある議員がいることで、旧統一教会問題は、追及されても、「今後の対応をしっかりしていく」として逃げ切れる、さらに、規制を強化する法案などを与野党でしっかり行っていける案件だと踏んだのだろう。
では、なぜこのタイミングで改造が行われたのか。それは、支持率アップというよりも、今後の安倍派の安定、ひいては、安倍派の新リーダーとなる人物を岸田総理自らが選んでいくという意思を表すための人事だったのではないかと考える。
宏池会(岸田派)の領袖であり総理総裁である人物が、別の派閥の安定と人材を考える……そこにはいかなる理由があるのか。