安倍派新リーダーたちがすべてそろった閣内と党役員
内閣改造に関して、報道を見ると「安倍派に配慮」「挙党態勢を演出」「安定感重視」といった文言が並ぶ。どれも当たっているだろう。
安倍派は松野博一官房長官を筆頭に4人、プラス総裁選で安倍氏の声掛けで多くの安倍派が応援した高市早苗氏(無派閥)が経済安保相として入閣。岸信夫氏は安保担当補佐官として、森まさこ補佐官(安倍派)とともに官邸に残ることになった。
麻生派が4人、茂木派3人、岸田派3人(岸田首相を除く)、二階派2人、無派閥(野田聖子派)1人となり、補佐官の2人を加えれば安倍派を主流派として最重要視しているのがわかる。
「挙党態勢」という意味では、総裁選で戦った河野太郎氏をデジタル担当相、高市氏を入閣させ、「安定感」という意味では、官房長官、財務大臣、外務大臣という骨格を維持し、加藤勝信氏を3度目の厚生労働相、浜田靖一氏を2度目の防衛相に任命している。
そして、党の役職でも、麻生副総裁、茂木幹事長とともに、萩生田光一政調会長と森山裕選対委員長という布陣は、挙党態勢でこの3年間を乗り切ろうという岸田総理の意思が表れている。
前回の内閣では、小林経済安保相、牧島デジタル相と若手が2人抜擢されたが今回は、小倉将信少子化相の入閣だけで、女性も前回同様、2人。党役員に至っては、四役に女性は1人も入っておらず、後退している。
人事を一新して新しいイメージで、支持率アップを目指すというよりも、岸信夫氏の処遇はじめ総理の人事権を使って、安倍派をどう治めていくかという視点から考えられた人事とも言える。
そして、安倍氏亡きあと、安倍派のある議員は「岸信夫先生はその存在だけで、安倍派の象徴となる」と話した。それまで、安倍氏の弟という立ち位置で、安倍氏の裏に隠れていた存在はいまや、「安倍氏の血をひく政治家」として存在感を示している。
テレビ越しにも体調が悪そうな岸氏を無役にせず、安保補佐官とする岸田総理の意図はすなわち、安倍派の新リーダーはすべて自分の手中にあるということだ。岸信夫補佐官、松野官房長官、西村経済産業大臣、そして政調会長の萩生田氏である。