※本稿は、村山康文『韓国軍はベトナムで何をしたか』(小学館新書)の一部を再編集したものです。
韓国軍が犯したとされる事件を取材するためにベトナムへ
2014年2月の渡航から4カ月後の同年6月、私はフーイエン省の省都トゥイホア市に初めて降り立った。
前回訪れたビンディン省タイソン県とクアンナム省ディエンバン県のフォンニ村・フォンニャット村、そしてハミ村での聞き取り調査を終え、日本での仕事のためいったん帰国をしていた。帰国後に聞き取りをした資料をまとめ、金賢娥氏の書籍などと照らし合わせることで、少しずつだが、ベトナム戦争中に韓国軍が犯したとされる事件のいくつかが見え始めてきた。そして今度はフーイエン省で聞き取りをしようと思い、再び渡越したのだ。
通訳は「お義母さんが田舎から来て、子どもの面倒を見てくれているから大丈夫」と、いつものダオが同行してくれた。フーイエン省は、ビーチリゾートで有名なニャチャン市があるカインホア省の北に隣接している。ビンディン省に次いでマグロの漁獲量が年間約4000トン(2013年)(※1)と、遠洋漁業が盛んな省だけあって、新鮮なマグロ料理が安く食べられる専門店がトゥイホア市内には数軒ある。
南北統一鉄道のトゥイホア駅に降りると、ダオがドライバーをつかまえて、いつも通りホテルまでのタクシー料金の交渉を始めた。気が利きくダオは、明日からのレンタカーの交渉も同時にしてくれているようだ。
ダオが駅前広場で最初に声をかけた35歳のドライバー、ホー・ミン・サン兄は、「酒」「タバコ」「ギャンブル」を一切しない真面目で堅実な男だった。インテリアのセールスマンをしていた時代に貯めたお金で、15人乗りのワゴン車を購入し、転職。利用客の少ないフーイエン省の田舎町で妻と三人の子どものためにレンタカーのドライバーとして必死に働いていた。
(※1)岡山県ベトナムビジネスサポートデスク「ベトナムにおけるマグロ漁業」『岡山県ベトナムビジネスサポートデスクレポートVol.78』2014年