韓国の歴代大統領は熱心な「ファンクラブ」に支えられてきた。フリージャーナリストの金敬哲氏は「文在寅・前大統領には『月光騎士団』と呼ばれる過激なファンクラブが存在し、批判的な記事を書いた記者を休職に追い込むこともあった」という――。

※本稿は、金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

2022年4月25日、韓国ソウルの大統領府青瓦台で行われた上級秘書官との会談で発言する文在寅大統領
写真=EPA/時事通信フォト
2022年4月25日、韓国ソウルの大統領府青瓦台で行われた上級秘書官との会談で発言する文在寅大統領(当時)

困難な道を選んだ盧武鉉の挑戦に支持が集まった

韓国には「政治家のファンクラブ」が存在し、ネット世論を主導する大きな影響力を持っている。会員たちはネット上で組織的に動き、自分が支持する政治家に有利な世論を醸成しようと努力する。韓国初のファンクラブは「ノサモ(盧武鉉を愛する人たちの会)」だった。彼らが2002年の大統領選で大活躍し、盧を大統領に就任させるのに一役買った経緯を紹介しておこう。

00年4月の総選挙で、当時の新千年民主党の盧武鉉候補は故郷の釜山江西(プサン・カンソ)地域で出馬し、落選する。彼は人権派弁護士出身で、ソウル鍾路区(チョンノグ)を選挙区として活動する国会議員だったが、当時の韓国の深刻な東西格差を解決するため、釜山に国替えして出馬したのだ。

しかし、いくら彼が釜山出身でも、釜山の有権者は全羅道(チョンラド)を地盤としてきた民主党の候補を認めることはなかった。それほど東西の分断は深刻だったのだ。それをわかっていながら彼は3度釜山で国会議員に挑戦し、いずれも落選してしまう。それでも、革新勢の強いソウルだったら議員を続けられたにもかかわらず、わざと険しい道を選んだ彼の挑戦は韓国社会で大きな反響を呼ぶ。