自分のファンが記者を脅迫しても文在寅は問題視せず

彼らは、「政権の敵」と判断する人物には、個人的にメールや電話をかけて脅迫することもはばからない。

金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)
金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)

19年3月、文在寅が北朝鮮側に与しすぎだとして「北朝鮮の金正恩委員長の首席報道官」などと皮肉まじりに国会で批判されたことがあった。この発言はブルームバーグ通信の韓国人女性記者が書いた記事内で使われた表現の援用だったのだが、「月光騎士団」たちは、当該記者の個人情報を晒し、メールや電話で脅迫。記者は精神的なショックで会社を休職する状況にまで至った。

ほかにも、政権に不利な判決を下した判事や、政権に批判的な保守系マスコミの記者も、彼らの攻撃対象になった。度を越した彼らの行動はメディアや世論から非難を浴びているが、文在寅は彼らの行動を「政治の味を生かすタレ」と表現し、問題意識を全く見せなかった。

尹錫悦を当選させた“アンチフェミ”の支持者たち

李在明のファンクラブである「ソンガヒョク(指革命軍)」は、大統領選挙を経てさらに大規模になり、「革命の娘(ケタル)」「良心の息子(ヤンア)」と名前を変えた。活動性や攻撃性において月光騎士団を上回ると一部では評価されている。

最後に、尹錫悦が大統領選で勝利した決定的な要因をあげたい。それは、妻をめぐる一連の疑惑や本人への関心の低さで支持率が低空飛行を続けていた1月7日、「女性家族部」の廃止を発表したことだ。これにより、フェミニズムに対して攻撃的な姿勢をみせる20代男性の“女性優遇”“男性への逆差別”という主張に火をつけ、彼らを味方につけることに成功したのだ。

その後、彼らは尹のために、20代の男性が多く利用する「FM KOREA」などのサイトを舞台に組織的に運動を展開。李在明側の失策を次々と流布させたり、相手側が流すフェイクニュースを見つけ出したりしては素早く告発したり、関連記事のコメント欄を先に独占して、組織的に尹側に有利なコメントを書き込んだりした。

パソコンを使用するフードを被って顔の見えない人
写真=iStock.com/twinsterphoto
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