運命のベンチ入りメンバー発表…監督・部長の言葉
取材で学校を訪ねた日は夏の地区予選のメンバー発表の日だった。ベンチ入りメンバーを読み上げた後に高島監督が思いを伝える。
「われわれスタッフは長年、高校野球に関わってきて最後は3年生に頑張ってもらいたい、全員でベンチに入って戦い抜いてもらいたいと思っている。でも野球はポジションがあって、適性がある。漏れた3年生も別の形で貢献できる。あと数カ月しか高校野球はないから、ベンチに入るか入らないかにかかわらず高校野球をまっとうしてもらいたい」
井田郁浩部長(50歳)が続ける。
「俺がここにきて5年。一番、発表が遅かったかな。それは最後まで3年生に頑張ってもらいたかったから。でも、俺らは戦う集団で、なれ合い集団じゃないんで。背番号がもらえないからといっても、できることは必ずある」
そして、実力で背番号をもぎとった2年生には、ベストパフォーマンスを出すことが出られない3年生のためにできること、とげきを飛ばした。
村松主将に「言っておきたいことはある?」と尋ねた。ここぞとばかりに口調が強くなった。
「最近、長髪解禁の学校が増えています。丸刈りだから頑張れないとか、丸刈りじゃないのが新しいとか、髪型で野球を頑張れないのは違うのかなと。丸刈りを拒んでいるのは野球への思いが弱いのかなと思う。
タカタカは伝統がある学校で、丸刈りがカッコいいと思っています。こういう考えが古いと言われてもいい。偏見と言われることは重々承知して、タカタカはあえて丸刈りでいきます。
今回、初めての試みなんですが、部員のお父さんに美容師さんがいて、大会の1週間前に来ていただいて五厘(約1.65cm)刈りにします。強制ではないんですが、みんなやると思います」
時代に逆行して、熱く訴えた村松主将の決意は新鮮だった。
学校の西側にある観音山に高崎観音が立っている。高崎市のシンボルだ。基礎トレのため1年生は往復1時間のランニング、通称“山ラン”をしてきた。
高島監督が言った。
「部員たちがグラウンドに入る時に二度、挨拶をするんです。なんで、と聞いたら、一度はグラウンドに、もう一度は観音様にしてるというんです」
タカタカの部員にとって観音様はそれほどの存在なのだ。その観音様に日々の努力を披露する夏の大会の初戦は、この7月10日に迫っている。