自主性に任せた新旧監督の選手への信頼が「ベスト8」に
赴任早々の高島監督が取るべき采配は“触らない”ことだった。
「春は、指導はしてないです。彼らも初戦に勝った勢いを2、3回戦につなげていった。ピッチャーもそうですが、勝っていくうちにそれが自信になった。正直、彼らが自分たちで考えてやる、こうやりたいというのがあったので、その気持ちとか、その野球に僕が尊重して乗っかったという感じです。打順も入れ替えなかったです。いい形で回っているので、あえていじる必要はないなと」
部員にとっては指揮官変更の一大事。“新顔”の高島監督には繊細で難しいかじ取りが求められたはずだ。
「指導者が変わって、それだけでもいろんなストレスを感じやすい。いかにして気分よく戦わせてやるか、ということでした」(高島監督)
村松主将は、やりやすかったと話す。
「高島先生に自分たちのやってきた野球を尊重していただいて、後押ししていただきました。境原先生と同じように自分たちのやってきたものに任せる、となったので成長できたし、勝ち進めたと思います」
コロナ禍で部員の心身は着実に成長していた。そこに自主性に任せた新旧監督の選手への信頼がベスト8という成果をもたらした。
6月下旬、タカタカは1学期の期末試験を控えていた。基本的に試験前から試験期間中は部活禁止になる。だが、大会が間近に迫る部は特例を認められている。野球部は普段は20時ぐらいまで練習するが、この期間はその半分、2時間ほどの練習時間になる。
サッカー部との接触を避けるため、外野にネットを置く作業から練習はスタートする。
この日はバッティングとウエートトレーニングの2つの班に分かれて行われた(他に控え部員は応援練習)。練習メニューは部員たちが決めたものだ。バックネットに向かって打つフリーバッティング組と外野では数人がロングティーを打った。
高島監督は練習も部員に任せている。
「部員が自分たちでしっかり引き締まった雰囲気をつくろうとしています。この学校は生徒たちが自らやっていく校風があるんです」
生徒主体で大人の力を借りずになんでも取り組むのだという。
顧問の飯野さんが付け加える。
「学校として部活を一生懸命にやる土壌がある。SSHに指定されていて文化部も活発。兼部もありますが、加入率が100パーセントを超えている。入ったら辞めずに続けるし、目的を持って部活を選んでいる」
部活だけではなく、6月上旬の伝統の文化祭『翠巒祭』も実行委員会を中心に生徒主体に代々、引き継いできた。