通称「タカタカ」――群馬県立高崎高校は東大・京大を含む国公立大や有名私大に毎年、多くの合格者を出す。生徒は勉学の傍ら部活にも全力投球。野球部員は夜8時まで練習し、朝は7時に登校し勉強する。どのように両立させるのか。フリーランスライターの清水岳志さんが夏の大会直前に監督や部員に密着した――。
群馬県民がタカタカ、マエタカ、タタカを尊敬する理由
群馬県内では県立の前橋高校を「マエタカ」、太田高校を「タタカ」、そして高崎高校を「タカタカ」と呼ぶ。その独特な略称には県を代表する進学校に対する尊敬の念が含まれている。
高崎高校(以下、タカタカ)は1879年創立。福田赳夫、中曽根康弘という2人の総理大臣を輩出したことで知られ、東京大や京都大に毎年合わせて2ケタの合格者を出すトップ校だ。文部科学省から「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」にも指定され勉学、部活に励む文武両道の男子校である。
1学年280人、40人学級が7クラスある。
「群馬県は全県1区の入試です。タカタカは北の渋川、沼田地区からも電車での通学がしやすい。マエタカ、タタカの3校だとうちが一番倍率は高いです」
野球部顧問の飯野道彦さん(40歳)が教えてくれた。
そのタカタカが先日開かれた公式戦の春季大会で3勝を挙げ、県ベスト8に進出した。準々決勝は強豪私学の桐生一に食い下がった。
3年生16人、2年生14人、1年生18人をまとめるのが村松健心主将だ。チームではトップバッターでライトを守る。
今年の3年生は高校野球を「最も経験していない」学年だ。2020年4月、コロナ禍と同時に入学し、直後の3カ月間はオンライン授業や分散登校。部活は禁止だ。
「野球部に入ってもチームメートが誰かもわからない。7月に全員がそろって練習かと思ったらすぐに独自大会を迎える状況でした」
と村松主将が入部当時を振り返る。