“史上最弱”のチームに監督「俺は何もしないから」

ここまで2年数カ月の高校生活で、延べ6カ月間は全体練習ができなかった。昨夏に新チームが立ち上がった際も分散登校で部員半分半分の練習が続いた。

「秋の大会の本番も久しぶりに会って、こういう(守備の)シフトがあったねとか、こんな(投手からランナーへの)牽制球があったよねとか。当日に確認するような感じでした」

そんな現場慣れしていない状態での初戦。コールド負けを喫したのもしかたなかったかもしれない。

「史上最弱の学年と言われてました」(村松主将)

そこからどう、立て直したのか。当時のタカタカの境原尚樹監督は思い切った宣言をする。

「ここからは俺は何もしないから」

放任することにしたのだ。

「これまでのタカタカは先生(監督)の意図を深く感じることなく、ただ言われたことをやっていました。休校期間も先生の指示に従うままでした。でも、その時から何も言われなくなった。今から思うと自主性を求めていたのかなと思います」(同上)

選手の考える力、向上心が試されることになった。

ベンチに掲げられたスローガン「打って打って打ちまくれ!」
撮影=清水岳志
ベンチに掲げられたスローガン「打って打って打ちまくれ!」

オンライン練習でトレーナーに指導してもらって、各自が自宅で体作りを実践した。

日曜日の9時から部員同士でオンラインミーティングを行った。おのおののトレーニングの報告、どういう食事がいいか、野球哲学などを伝え合った。雑談も含め3時間に及ぶこともあった。

薄れかけていた一体感が生まれ、チームとして目標が明確になったはずだ。

「監督に突き放されたことが大きかった。自主練で何ができるか、を自分たちで考えました。1週間単位で練習内容を報告するので、自然とやらざるをえない。野球をずっと考えていて、そこでどの学校よりも伸びたと思います」(同上)

そうやって迎えた2022年春季大会。いずれも2ケタ得点で3勝し、私立・強豪の桐生一には3対5と惜敗した。

「ただ、ベスト8ということだけじゃなくて、打倒私学を目標にあと一歩というところまで近づけた。結局、私学にボコボコに負けたんじゃ、その差を感じて終わっちゃうだけですけど、勝ち上がって、挑戦権を得てギリギリの勝負ができたのは大きな成果だったと思います」

こう春季大会を評価するのはタカタカ新監督の高島喜美夫(50歳)さんだ。

タカタカの練習風景
撮影=清水岳志
タカタカの練習風景