旧態依然とした営業で若者をつぶすのは日本経済の損失
営業マンと営業を受ける側の企業との攻防は常にイタチごっこでしたが、長引く景気低迷(失われた30年)、インターネットの普及、個人情報保護法、働き方改革がそのゲームのルールを変え、ついに直近のコロナ禍でその攻防はさらに難解になったように見えます。
私は新卒でリクルートに入社し、営業のキャリアをスタートさせました。それから36年がたちましたが、特に新規開拓営業は右肩上がりにその難易度を高めています。
バブル期以前にもお客さまにとって迷惑な営業マンは山ほどいました。いわば“お行儀の悪い”営業マンです。飛び込みで受付をしゃがんで通過し、オフィスに潜入してしまったり、キーパーソンの自宅住所を調べて、日曜日に偶然を装って待ち伏せしたりする人もいました。敏腕営業マンほどそのようなやり方をしていました。
しかし、時代は変わりました。ゲームのルールが変わった最大の理由は、日本経済が成長期から成熟期になってしまったことです。成長期には気合と根性で成果を出すこともできました。そのいい時代を生きた人たちが管理職や経営陣になって、同じような営業スタイルを若手に押し付けている企業も散見されます。
もちろん、そうした企業の若手の離職率は高いのですが、せっかく夢を抱いて社会に出た若者が、旧態依然とした営業のやり方を強要されてつぶされているとしたら、日本にとっては大きな損失なのではないでしょうか。
営業マンは「営業は断られたところから始まる」と考えている
そうした若者を救うために、自分に何ができるかを考えました。
これまで、営業コンサルである私の立場は常に営業マン側にありました。どうしたら売れる営業マンになれるのかを指導するのが私の仕事です。
しかし、その方法論の一部だけが切り取られて、すでに効力を失った“お行儀の悪い”営業を強いられ、営業のキャリアを捨ててしまう若者が少なくありません。
私の使命は、この令和の時代に成果を上げる営業方法を後進に伝え、「お客さまから迷惑と思われる営業マン」を減らすことに他なりません。
その目標達成のためには、まずはお客さまのほうに「迷惑な営業のかわし方」を徹底していただくことも必要と考え、本稿で迷惑な営業の手口とその対処法を共有することにしました。
最初に言っておきますが、新規のテレアポで「会議中です」「外出中です」と居留守を使って、かわしたつもりになっていても、ほとんどの営業マンは、気にせずに、戻り時間を聞いてくるでしょう。「営業は断られたところから始まる」のですから。
賢い営業マンたちは架電した時間を記録し、今度は曜日や時間帯を変えて電話してきますし、業界によって何曜日の何時頃が一番着席率が高いかも膨大なデータベースを蓄積して、割り出しています。
迷惑な営業マンは、簡単には撃退できないのです。そこで、ここではよくある迷惑な営業マンがやりがちな7つの手口とそれぞれの対処法を紹介していきます。