不合理な要求を繰り返すクレーマーにはどう対処すればいいのか。国際弁護士の射手矢好雄さんは、「不条理な主張に対しては、そもそも“交渉”に応じる必要はない。開き直った態度を取ってしまえば、相手は何もできなくなる」という――。(第3回)

※本稿は、齋藤孝・射手矢好雄『BATNA 交渉のプロだけが知っている「奥の手」の作り方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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“嫌な人”を相手にどう交渉するか

交渉をしていると、相手が妙に頑固だったり、「絶対に妥協しない」という雰囲気を出したりしてくる場合もあります。

あるいは、押しが強くて強引だったり、ちょっとずるい人だったりと、あなたにとって“嫌な人”の場合もあります。そんな相手には、どのように対応すればいいのでしょうか?

実はこれも、「交渉の7つのカギ」(第1回記事「『これが中国のルールだ』国家マウントしてくる中国企業に国際弁護士が突きつける“奥の手”」参照)における〈利益〉の分析から突破口が開けます。

「この交渉でなにを実現しようとしているのか?」
「本当に大切なものはなにか?」

交渉で得たい成果=〈利益〉は、自分だけでなくその“嫌な人”にもあるはずです。そこで、まず相手が「なにを求めているのか」を探りましょう。

態度だけを見ると、確かに相手は“嫌な人”かもしれませんが、こちらが感情的にさえならなければ、相手が追求しているものを冷静に見極めることはできるはずです。

それさえ見極めることができれば、自分の〈利益〉とともに、相手の〈利益〉も達成できる〈オプション(選択肢)〉を提示すればいいのです。

たとえ相手が妥協しない雰囲気を出していても、得たい〈利益〉を提示されて譲らない人はほとんどいないので、相手がどこまでの条件なら譲歩するのか、〈オプション〉の提示によって探ることができます。

好きなものを探って「武装解除」にトライ

場合によっては、交渉用語でいうところの「武装解除」を先に試みましょう。武装解除とは、〈コミュニケーション〉を通じて相手の心を解きほぐしていく作業になります。

どんなに“嫌な人”でも頑固な人でも、こちら側にとって嫌であったり頑固であったりするだけで、当然その人にも「好きなもの」はあります。

例えば、その人は落語が好きかもしれないし、囲碁が好きかもしれないし、お酒が好きなのかもしれません。そんな「好きなもの」を、まず会話という〈コミュニケーション〉から探り出していき、相手の武装を解除していきましょう。

そうして、少しずつ「相手がなにを欲しているか」という〈利益〉の分析に近づいていくといいと思います。