トラブル対応の究極の手段「どうぞどうぞ」

ビジネスでは、ときに思わぬトラブルに見舞われることがあります。トラブルの種類は様々ですが、どんな業界や仕事でもありがちなのは、クレーマー被害やSNSなどでの炎上、ランサムウェアなどのサイバー攻撃などが挙げられます。

「〈BATNA〉つぶし」は、目の前の交渉を〈合意〉に持ち込みたいときだけでなく、このようなトラブル対応の究極の手段としても役立ちます。

どういうことかというと、例えば「言うことを聞かないと訴えるぞ」といったクレームに対して、当初は相手の言い分を誠実に聞きますが、あまりに不合理な主張であれば「どうぞやってください」という態度を取ってしまうのです。

相手はなんらかの交渉を欲していて、交渉が成立しないなら〈BATNA〉を選ぶ(この場合はこちらを訴える)わけなので、「どうぞどうぞ」といって、あらかじめその〈BATNA〉をつぶしておくのです。

実際の訴訟で損をするのは脅した側

実際に訴訟になると、損をするのは脅しをかけた側ですから、「〈BATNA〉つぶし」だけで多くのトラブルは収まります。仮に、実際に訴えられたとしても、粛々と対応すれば、悪い結果にはなりません。

裁判のイメージ
写真=iStock.com/William_Potter
※写真はイメージです

これらのトラブルで相手はなにをしているのかというと、「危害を加える」と匂わせて、相手に服従を強いようとしているのです。ランサムウェアなどの身代金要求も同じで、「身代金を払わなければ機密情報をばらす」という脅しに過ぎません。

でも考えてみれば、相手は情報を流すだけでは一文の得にもならず、むしろ罪が重くなるだけです。身代金を取ってはじめて、相手の〈利益〉は達成されるからです。

つまり、トラブルに見舞われたときはいかに恐怖心を取り除くかが重要であり、「ばらしたいならどうぞやってください」「たいした内容じゃありませんから」と開き直ることが、必要な対応策になるのです。