自分にとって嫌な相手だからこそ、むしろ自分の「嫌だ」と感じる感情から離れる姿勢が大切になります。

感情的には難しいかもしれませんが、相手には必ず突破口になり得る〈利益〉があるはずです。

その〈利益〉にアクセスするために、まずは〈コミュニケーション〉で武装解除して、しかるべき交渉に持ち込んでいきましょう。

相手に「他にたいした選択肢はない」と匂わせる

こちらがなにをしても相手が譲らなかったり、不条理な行動をされたりしたら、もう〈BATNA〉という奥の手を出すしかありません。

「わかりました。そうであればあなたとは取引しません」と伝えて、交渉を打ち切ることになります。

〈BATNA〉はBest Alternative To a Negotiated Agreementの略で、「A社と話がまとまらなければB社に持っていこう」というように、目の前の相手と交渉が成立しないケースをつねに考え、あらかじめ持っておくべき「最良の代替案」のことです。

ただし、交渉を打ち切って自分の〈BATNA〉を取る前に、「相手の〈BATNA〉つぶし」を試してみるのはいい方法です。

〈合意〉しないということは、相手もまた自らの〈BATNA〉を取ることになるので、このときに、「もし取引をしないなら確実に損をしますよ」「この取引以外にたいした選択肢はないですよ」とちらつかせることが、効果的になる場合がとても多いのです。

重要なのは相手の〈BATNA〉と〈利益〉の分析

「〈BATNA〉つぶし」は伝え方が難しい場合もありますが、要は、「こんないい話を断るのですか?」というニュアンスが相手に伝わればいいのだとシンプルに考えてみてください。

そのためには、やはり相手の〈BATNA〉を知っておくことが欠かせません。相手の〈BATNA〉は、相手の〈利益〉や〈オプション〉を客観的に分析するなかである程度推測できますが、それに加えて、〈コミュニケーション〉によってふだんから探っておくのも大切です。

相手が自らの〈BATNA〉を具体的にいわない可能性もあるため、その場合は推測になりますが、立ち戻るべきは相手の〈利益〉の分析です。そのうえで、相手が〈BATNA〉を取ることで、いかに大きな〈利益〉を逃してしまうかを伝えていけばいいのです。