「東芝ウオッチャー」も首をかしげる総会だった
メディア業界には「東芝ウオッチャー」と呼べるような人が少なからずいる。
東芝では2015年に粉飾決算が発覚し、その後、原子力発電所事業で巨額の減損処理を迫られた。資本が急激に不足したので増資が必要となったが、そこに手を挙げたのが多くのアクティビスト(物言う株主)だった。
経営を立て直すため外部から招聘したCEO(最高経営責任者)は、大株主となったアクティビストと折り合いが悪く、2020年の株主総会で再任が否決されそうだったので、監督官庁の経済産業省が口を出し、おかげで首の皮一枚で続投。しかし経産省との裏工作が明るみに出たことで猛烈な批判を受け、窮余の一策でぶち上げたMBO(経営陣による買収)は尻すぼみとなった。
経営トップは替わったものの、執行部とアクティビストの足並みが揃うことはなく、昨年11月以降、執行部が唱え続けた会社分割案は今年3月の臨時株主総会で否決された。残された道は非上場化しかない――。
2015年から7年間にこれだけのことが起きたのだから、あれやこれやと書き立てる「ウオッチャー」が出てくるのは半ば当然で、筆者もそのうちの1人かもしれない。
注目は「2人のアクティビティスト幹部の選任案」だったが…
もっとも今年の東芝の株主総会が終わり、ほとんどのウオッチャーの関心は「それで誰が買うのか?」に移るのだろう。「ここにきて経済安全保障が取りざたされているから外資系ファンドは買収できない」「国内ファンドの最有力は産業革新投資機構だが、元手はもとはといえば税金。血税をつぎ込んでよいのか」。向こう数カ月、そんな記事がやたらと出るだろうが、それよりもむしろ「こんな株主総会で良いのか」ということを問題にすべきではないか。
6月28日午前10時から東芝の株主総会が開かれた。今回の見どころは取締役選任議案が可決されるかどうか。株主に判断を委ねられたのは13人で、このうち6人は再任。残る7人のうち2人は米ファラロン・キャピタル・マネジメントと米エリオット・マネジメントというアクティビストの幹部である。
日本企業では大概、株主総会に諮る取締役選任議案を現任取締役が全会一致で決める。ところが今回の東芝では社外取締役の1人で、元名古屋高裁長官の綿引万里子氏が議案に反対した。