「こんな株主総会で良いのか」疑念はまだある
今年の東芝の株主総会が「こんなので良いのか」と思わざるを得ない点はもう一つある。
指名委員会等設置会社という言葉を耳にする機会が増えている。経営を執行と監督に分離し、監督役である取締役が株主の代表として経営を担う執行が正しく活動しているかをチェックする形態をとる企業を指す。
指名委員会等設置会社には指名委員会、監査委員会、報酬委員会が設置され、取締役が手分けして各委員会の委員に就く。中でも重要なのは指名委員会といわれる。取締役やCEOなどの選解任で大きな権限を持つからで、とりわけ指名委員長は場合によってはCEOよりも大きな権限を握っていると考えられなくもない。
東芝は指名委員会等設置会社で、指名委員長はレイモンド・ゼイジ氏。同氏は取締役として東芝の前執行部が検討していた会社分割案の議論に参加していたはずだが、その賛否を問うために3月に開かれた臨時株主総会で会社案に反対した。
さらにゼイジ氏は6月28日の株主総会で諮られた取締役選任議案を決めるにあたり、アクティビスト2人を加えるよう強く主張したとされる。このため当初は5月13日に予定されていた東芝の取締役候補発表は延期となった。
これで日本企業はさらに世界の笑いものに
ゼイジ氏が取締役にしようと強く迫った2人のうちの1人は今井英次郎氏。同氏が所属するファラロンにゼイジ氏はいた。
指名委員会等設置会社は株式会社の経営を適正化するのに有効な仕組みといわれるが、欠点も指摘されている。
詳しくは拙著『決戦!株主総会 ドキュメント LIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)でも解説しているが、指名委員会は経営の暴走を食い止める大きな砦の役割を果たす。しかし、その指名委員会の暴走を食い止める装置は脆弱で、長らく問題視されてきた。今年の東芝の株主総会ではまさに指名委員会の暴走が起きたと言わざるを得ない。
確かに株主総会は終わった。決まったことが覆ることもないだろう。しかしこれを終わったことと簡単に片付け、「どこが東芝株を買い取るのか」に関心を寄せるようになってしまえば、日本株が割安な原因の一つとされる日本企業の未熟なコーポレートガバナンス(企業統治)はさらに嘲笑の対象になるだろう。