少年が大人の男になるために儀礼的に同性愛を結ぶ社会がある。文化人類学者の奥野克巳さんは「高地ニューギニアに住むサンビアでは、少年が優れた戦士になるためには年長の男性から精液を注入されなければならない。結婚しても関係が続くケースもあり、サンビアの男たちは一生の中でさまざまなセクシュアリティを生きる」という――。
※本稿は、奥野克巳『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。
ボノボはなぜ“ハーレム”を作らず“乱交”するのか
ボノボは、ハーレム型ではなく乱交的な集団を形成しています。チンパンジーの仲間は基本的に発情したメスをめぐってオス同士が争いますが、ボノボはそうした争いがほとんど見られず、非常に「平和的」な特徴を有していることで知られています。ボノボたちの間では、相手の口に舌を差し入れるディープ・キスや、メス同士が性器をこすりつけ合う「GGラビング」、オス同士が互いの尻をくっつけ合う「尻つけ」などの性的な行為が頻繁に観察されます。
動物行動学者のフランス・ドゥ・ヴァールは、ボノボはこのような乱交的なセックスを行うことで、結果的に父親が誰であるのかわからなくなるような社会を作り上げたと言います。そして、それにより悲惨な「子殺し」を回避することができたという仮説を唱えています。
また、メス同士が性的な行為を主体的に行っていることからもわかるように、ボノボの社会では、メスがイニシアティブを握っています。同性間で行われる性的行為には、わだかまりを解消する意味合いもあるのです。