マイナス130度、猛烈な嵐が吹く星に生命はいるのか
「激しい嵐です! 風速は時速1600キロ。あっ、稲妻です。続いて、凄まじい轟音も届きました。地球の稲妻の1万倍の強さです! 北極周辺に目を移してみましょう。不思議な模様ですね。よく見てみましょう。なんと六角形です! 一辺の長さはおよそ1万3000キロメートルもあります」
もし土星を現場中継する記者がいたら、こんな実況をするかもしれない。気象が激しいのは、土星の自転周期がわずか10時間余りと短いからだ。コリオリの力が強く働き、空気がかき乱されるのだ。北極周辺に浮かび上がる六角形模様は気流の気圧、密度、温度が相互に作用して嵐になった結果、形成されたと考えられている。
ただし、嵐により六角形が形成される詳しい仕組みはまだわかっていない。マイナス130℃の極寒の気候に、地球とは比較にならないほど猛烈な嵐に見舞われる土星本体に生命が住めるとはとても考えられない。
土星ではなく、その衛星に注目が集まっている
土星本体ではないとすると、生命が存在する可能性のあるのはどこか?
すぐに目に付くのは、巨大な環である。一体の円盤のように見えるが、土星の環は、実は無数の氷の粒子からできている。粒子の大きさは1センチメートルから数メートルまでさまざまだ。それぞれ時速数十万キロメートルの猛スピードで移動している。粒子は時折激しくぶつかり合い、バラバラに砕け散ることもあるが、逆に合体し、徐々に成長することもある。
土星の環には、所々、小さな傷のようなものがある。その傷の中心にあるのは、生まれたばかりの衛星だ。これがさらに大きくなると、土星の周囲を回る衛星になる場合もある。土星にはたくさんの衛星が存在し、土星の周囲を回っている。
その数は、国際天文学連合(IAU)に登録されているものだけで66個、IAUの会報で報告されているものを含めると86個にのぼる(2021年12月1日現在)。
実は、生命の可能性があると注目されているのは、土星本体ではなく衛星なのだ。