ロシアのプーチン大統領とはどんな人物なのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは「21世紀最悪の大虐殺者となることは間違いない。すでに直接的には約7万人、間接的な殺人幇助も含めると30万人の犠牲者が出ている。そのなかにはロシアの民間人も含まれる」という――。

※本稿は、黒井文太郎『プーチンの正体』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

モスクワ郊外ノボオガリョボの大統領公邸でテレビ会議を行うロシアのプーチン大統領=2022年5月20日
写真=EPA/時事通信フォト
モスクワ郊外ノボオガリョボの大統領公邸でテレビ会議を行うロシアのプーチン大統領=2022年5月20日

万単位の規模で民間人が犠牲になったウクライナ

ウクライナ侵攻では、開戦直後から激しい戦闘で凄まじい数の命が奪われた。

2022年4月4日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、それまでのウクライナの民間人の死者は少なくとも1430人。実際には、はるかに多いだろうと発表した。

前日の4月3日には、ロシア軍が撤退したキーウ北方の街ブチャで多くの惨殺死体が発見されている。ブチャ市長はロイター通信に対し「300人以上が殺害された」と証言している。ブチャ以外でも同様の住民殺戮が行われたとの情報もあり、4月5日にはウクライナ当局が「キーウ周辺で410人の民間人遺体を発見」としている。

他方、南部の港湾都市マリウポリはロシア軍に包囲され、連日砲撃を受けてきたが、市当局は3月28日に「死者は約5000人」と発表している。こうした数字がどれだけ正しいかは不明だが、少なくともウクライナで同時点で数千人の民間人が犠牲になっていたことは、間違いない。開戦2カ月後の4月下旬では、残念ながら万単位の死者数になっていると思われる。

また、ロシア軍による犠牲者ということでは、民間人以外にウクライナ軍の犠牲者もいるが、こちらはウクライナ当局が厳重な情報秘匿を徹底しており、何人が死んだのか一切不明である。

ロシア軍の戦死者も2万人に上ると推定される

対するロシア軍の戦死者数も不明だが、3月21日にロシア紙サイトが「約9800人戦死」と報じ「すぐに削除」された。3月24日にはNATO当局者が「ロシア軍の戦死者が7000~1万5000人」としていた。

また、4月21日にはロシアの親政府系メディア「レアドフカ」がロシア国防省のオフレコ会見の内容を誤ってネットに流出させてしまったのだが、それによると正確な数字は統計不可能ながら、わかっているだけでロシア軍の戦死者は1万3000人以上、行方不明者が約7000人とのこと。合わせて2万人近い死者ということになりそうだ。

開戦から2カ月で凄まじい数の戦死者推定だが、ウクライナ軍もやはりかなりの戦死者が出ていることは疑いない。ロシア軍と同じくらいの戦死者が出ていてもおかしくはないのだ。

以上はいずれも、プーチンがこの「恥ずべき侵略」を始めなければ、死なずに済んだ貴い命だ。つまり開戦2カ月ですでにプーチンは、おそらく3万人以上のウクライナ人を殺害したのだ。