会社をたたみ再起を決意した!
「この会社は、もたない。あと7、8年は利益を維持できても、その先は無理だ」
大卒後に自ら始めた食品の仲卸会社。20年近く社長として社員6人を雇うまでに成長してきた。しかし、潮目は変わった。メーカーは直接消費者に配送する時代となり、仲卸業は流通システムの中で“退場勧告”されたも同然だった。
「人生を、やり直そう」
不惑の年に、会社をたたんだ。それから4年。元社長は「日本一の不動産営業マン」になっていた。肩書は「売買仲介課課長」、宇野秀樹氏が勤めるのは大和不動産である。埼玉県さいたま市に4店舗を展開する、“街の不動産屋さん”である。賃貸物件の仲介や管理もやれば、戸建て・分譲・土地の売買や仲介もやる。
近隣には不動産ビジネス業者が約1000社あり、三井・住友の財閥系不動産を含むほとんどすべての大手が揃う、首都圏でも屈指の競争が熾烈なエリアだ。
創業56年間、地元密着でやってきたこの会社が宇野氏の人生巻き返しの舞台。そしてここ3年連続して10%成長する絶好調な同社の「エース」となる。
「仲卸業は仕事の形が残りません。だから本当は大工をしたかったのですが、見習い期間をすぎると定年になってしまう。だから、不動産業を選びました」
猛勉強して、宅地建物取引主任者の資格もとった。最初は20代の年下の先輩社員からも指導を仰ぎ、ノウハウを盗んだ。そのかいあって、09年秋には全国から不動産営業の精鋭たちがその成果を競う大規模なセールスコンテストで、「管理者」「仲介手数料」など3部門で優勝するという快挙を果たしたのである。
だが、まだキャリアの浅い宇野氏がなぜ?
仮にイケメン営業マンならば、紹介する物件がいまひとつでも顧客がつい契約してくれる、といった幸運にも恵まれるだろうが、失礼ながら宇野氏の場合は……。お茶目な表情で言うのである。
「まあ、僕の顔や外見は点数で言ったら、26点ぐらいですからね」