初対面の人には怖がられる

さて、入社4年で「日本一」の称号を得た「26点の男」のセールス術とは何か。聞けば、「初対面の人にはたいてい怖がられる」というその顔を逆に利用する。宇野氏の受け持ちは、地元で何代も続いてマンション経営したり不動産物件を複数所有したりする資産家や富裕層。50~80代が多い。億単位の売買を仲介することも珍しくない現場で、甘いルックスなど何の役にも立たない。家を売りに出す客にとって「より高く売ってくれる」と見込める担当者こそ望ましい。

同社では、「資産最適化」をコンセプトに、徹底したリピーター戦略をとる。日本一に輝いたのは宇野氏で3人目。

「まさに、資産家はさらなる資産をもっているということ。初めの取引は偶然でも、一度信頼を得ればさらなる優良資産を任せてもらえる」(専務・高田茂生氏)

会社の長年の顧客へ定期的に接触するだけなく、アポなし訪問して顔を売る泥臭い営業も欠かさない。「お困りごとはないですか?」。隣家の木の枝が敷地内に侵入していることに対してどう穏便に対処すべきか、素人には判断が難しい。そんなときに有効なのが法律の知識だ。感謝されたら、しめたもの。すぐさま不動産売買の話を持ちかけてもよさそうだが、そうしないのが日本一の証し。

「この物件は売らないほうがいいです」

客が不動産を売却したいと考えていても、資産価値やそのときの土地税法を考慮し、さらには「お客様の10年先の人生を考えて、資産が最大化するようなご提案をいたします」。損して得とれ、とはいうものの、実行できる人は案外少ない。

自称「26点の男」は客にとっては、100点満点の不動産コンサルタント。2010年は2度目の日本一の座を狙う。

※すべて雑誌掲載当時

(小原孝博=撮影)