ロシアとウクライナの戦争はいつ終わるのか。ジャーナリストの池上彰さんは「年内の終結どころか、数年単位で考えなければ終わらないように思える。これにはプーチン大統領の見通しの甘さなど3つの理由がある」という。ジャーナリストの増田ユリヤさんが聞く――。(連載第2回)
2022年4月26日、ロシアのプーチン大統領は、ロシア・モスクワのクレムリンでアントニオ・グテーレス国連事務総長と会談した。
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
2022年4月26日、ロシアのプーチン大統領は、ロシア・モスクワのクレムリンでアントニオ・グテーレス国連事務総長と会談した。

戦闘がやんでも、ロシア軍は占領地域に駐留し続けるほかない

【池上】5月9日の対独ソ戦勝利記念日、ロシアのプーチン大統領はウクライナに対する「特別軍事作戦」の継続を明言しました。この戦争は、さらに長引くことが確実になったわけです。

実際にロシアは、ウクライナ東部のドンバス地方のうちルハンスク州はほぼ手にしましたが、ドネツク州は半分ほどしか占領できていません。マリウポリについても勝利宣言はしたものの、ウクライナは認めていませんから、これからも攻防が続きます。ドンバス地方では過去8年間、親ロ派分離独立武装勢力とウクライナ軍の戦闘が続いてきました。それと同じことが、ウクライナ各地に広がって続くことになるでしょう。

この戦争は年内の終結どころか、数年単位で考えなければ終わらないように思えます。その先を考えると、ドンバス地方とマリウポリを含む黒海沿岸のすべてを占領すれば、ロシアは軍隊を引き揚げるでしょうか。そんなはずはありません。撤退すれば即座に、ウクライナ軍に取り返されてしまうからです。

つまり戦闘がやんだとしても、ロシア軍はこの先もずっと占領地域に駐留し続けるほかないのです。何万人もの軍隊にかかる軍事費たるや、膨大な金額になることは間違いありません。

ただしプーチン大統領は、ウクライナの首都キーウの占領は諦めたようです。キーウや西部のリビウへ散発的にミサイル攻撃を行っているのは、これらの場所を守るウクライナ軍がドンバス地方の増援に回るのを牽制するためです。

仮にウクライナが、ドネツクとルハンスクの両「人民共和国」を独立国家として承認すれば、戦争は終わるでしょう。しかし、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が承認するはずはありません。自国の国土を守れなければ、その瞬間に失脚してしまうからです。