移送される家族を不安げに見送った犬が…

「涙が出てしょうがない。上海だけはこんな悲劇は起きないだろうと思っていたのに……。コロナで何の罪もない、かわいがっていた犬まで殺されるなんて……」

2022年4月1日、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)により、閑散とする中国・上海市の街並み(中国・上海)
写真=AFP/時事通信フォト
2022年4月1日、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)により、閑散とする中国・上海市の街並み(中国・上海)

4月6日、上海市の浦東地区で、コロナ感染者が飼っていたペットの犬(コーギー犬)が防護服を着た防疫担当者に棒で叩き殺されるというショッキングな事件が発生した。同じマンションの住人が、家族が隔離施設へと車で連れていかれるところや、その車の周りを不安げに走り回っている犬の姿、車が走り去ったあと担当者にその犬が叩き殺されるところ、悲鳴のような犬の鳴き声が聞こえるところなどの一部始終を、部屋の窓から撮影しており、その動画がSNSで拡散されたのだ。

上海の別の地区で犬を飼っている友人はこの件について冒頭のように話し、「もし私が感染したら、うちの子(犬)をどうしたらいいのかと思ったら、不安で夜も眠れない。飼い主たちは皆、震撼しんかんしたと思います」と肩を落とした。他の友人も、「あの事件だけじゃないですよ。他でも同じように犬や猫が殺される事件は起きているんです」と話してくれた。

「上海は最も洗練されている都市なのに」

思えば、過去にもロックダウンされた武漢や西安など、さまざまな都市で感染者が隔離されたのち、飼っていた犬や猫などのペットが防疫担当者によって無惨に殺されたことがあった。

昨年11月には江西省で濃厚接触者が隔離施設に連れていかれたあと、消毒のため部屋に立ち入った防疫担当者が室内にいた犬を殴殺したことがあり、室内に設置されていた防犯ビデオでその“犯人”が発覚。SNSで拡散された後、市当局者は罰せられた。報道されていないものも含め、このような事件は、中国では枚挙にいとまがない。

だが、複数の上海人に聞いてみると、「まさか中国で最も洗練されている大都市の上海だけは、このような悲劇は起こらないだろうと思っていた。ロックダウンの前は高級な犬や大型犬を朝夕に散歩している人も多かったし、ペット関連のビジネスも中国でいちばん多い。それなのに、またもやこのようなことが繰り返されるとは……。ここはもう、中国で最も先進的な都市、上海ではない」と語り、ショックを受けたようだった。

このニュースが流れた翌日、中国人のSNS上にはペットホテルの情報が多数流れた。ペットを飼っている人向けのもので、一覧表にはペットホテルの住所や携帯電話番号、SNSのアカウント、いざというときのペットの受け取り方法や料金、収容可能なペットの種類などが記載されている。