「ペットは防疫担当者に一任する」という文書も…

また、前述した江西省などの例があったからかどうかは不明だが、今回の事件に関連して、3月下旬に上海市で発布された文書も多くの人の間でシェアされた。そこには、「いかなる人であっても家主の許可なしに(たとえ消毒であっても)室内に無断で入室してはならない」という市政府の文章が書かれていたからだ。

一部の地区では、感染者が部屋を退出したあと、部屋のカギを開けておき、消毒する必要があるといわれていたという情報があり、改めてシェアする人が多かったのは、そのことも関連しているようだ。上海などの大都市では、ほとんどの地区の行政担当者はマンション群や地区の人々とSNSグループでつながっており、行政通知もSNSで流される。

上海市といっても地区によって行政のやり方はすべて異なるため一概には言えないが、今回の件に関連して、これまで感染者が隔離施設に移送させられた場合、「ペットの取り扱いは防疫担当者に一任する」という文書にサインさせられたことがある、という人の情報も多数出回っており、「もし感染したら最後。自分のペットも無事ではいられないかもしれない」と震え上がっていた人が多かった。

SNSでは「飼い主の助け合いグループ」が乱立

しかし、今回、このような文書が発布されたことにより、多くの人々は少しだけ安堵あんどしたようだ。文書が出回ってきたという知人によると、各地区の担当者は3月下旬の文書を引用しつつ、「ですから、もし隔離施設に移送させられることになった場合でも冷静に対応してください。絶対に防疫担当者は自宅に無断で入室できないと拒絶してください、そして、ペットの預け先を確保し、預け終わるまで自分の目で見届けてください」などという注意事項を付け加えていた。

上海に限らないが、中国各地には「コロナ禍でのペットの飼い主の助け合いグループ」というような名称のSNSグループが数えきれないほど存在しており、そこにはコロナ禍でペットを飼う場合の心得やアドバイスなどが記載され、情報交換や個別相談もできるようになっている。

ふだんから十分なエサを確保しておくこと、ペットの消毒の仕方、家族が隔離された場合、ペットが室内で数十日か数週間生き延びるための水源の確保、汚物処理の問題、信頼できる近所のペット仲間に預ける準備、なども事細かく記載されている。

これまでは感染者が出た場合、ペットは自宅に置いていったり、野外に放したり、近所の人に預けたり、というケースが多かったようだが、前述のような悲劇も起きているし、隔離が長期間に及ぶ可能性もある。そのため、いざというときに慌てふためかないよう、SNSのグループで「マニュアル」も作成されるようになった。