3月2日、国連総会の緊急特別会合が開かれ、ロシアにウクライナから即時撤退を求める決議が141カ国の賛成多数で採択された。これに対し中国は「棄権」を選んだ。なぜ中国は国際社会と距離をとるようになったのか。『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)を書いた高口康太さんに聞いた――。(前編/全2回)
中国は国際社会に“絶対的な不信感”をもっている
——3月13日まで北京パラリンピックを開催していた中国ですが、近年、ウイグルの人権問題や香港の弾圧など国際社会から批判を浴びています。EUのピーター・バンダーレン欧州議会議員は中国を「ごろつき国家」などと批判しているほどです。なぜ、中国は、国際世論を意に介さずに独自路線を進めるのでしょう。
その背景には、歴史的に中国が抱える国際社会に対する絶対的な不信感があります。政府から人民にいたるまで国際世論を信頼できないという感覚を抱いているんです。
中国は、アヘン戦争以来、アロー戦争、清仏戦争、日清戦争……と国際社会に散々痛い目に遭わされてきました。中国の知識人や政府の高官たちは、諸外国から圧力を受けるなか、国際社会に期待していました。世界には国際法という道義を正すルールあるらしい。中国では万国公法と訳された国際法が、自分たちを守ってくれるはずだ、と。
しかし、彼らの期待は粉々に打ち砕かれ、各国にいいようにやられてしまった。その結果、国際社会、国際世論には期待できないという強固な意識が培われていきました。日本でも、正義と法にのっとって動く国際社会に期待する人もいるでしょうし、逆に国際社会は弱肉強食だと考えている人もいるでしょう。
その意味では、中国では、共産党の幹部や知識人、下々の国民にいたるまで、国際社会や国際世論に対して、諦観と言ってもいい感覚を持っている。