中国では2020年、東京・歌舞伎町を模した「ニセ日本街」を作ったことが問題となり、一部を撤去するなどの騒ぎになった。フリージャーナリストの中島恵さんは「今の中国人は、『日本のパクリ』ではもう満足できなくなっている」という――。

※本稿は、中島恵『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

中国・上海にある無印良品と中国EC大手「京東集団(JD.com)」の合弁会社による中国初の生鮮食品店「七鮮超市(7FRESH)」で買い物する客たち(2021年11月13日)(2021年11月13日)。
写真=CFoto/時事通信フォト
中国・上海にある無印良品と中国EC大手「京東集団(JD.com)」の合弁会社による中国初の生鮮食品店「七鮮超市(7FRESH)」で買い物する客たち(2021年11月13日)。

「とにかく日本に行きたくてうずうずしている」

コロナの影響で世界中の人々の往来は激減した。中国人の訪日旅行も2019年は過去最多の約959万人に上ったが、その後、彼らが日本を訪れることはできなくなった。武漢からコロナの感染が拡大したことや、中国の人権問題などにより、日本人の中国に対する感情は大幅に悪化。コロナの収束後もインバウンドの見通しは厳しいものになるだろうと予測されている。

中国人は今、日本についてどのような気持ちを抱いているのか。私が上梓した『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)は中国人の中国観がメインテーマだが、彼らは久しぶりに連絡を取った私に「日本愛」についても語ってくれた。上海在住の女性は語る。

「東京の自由が丘にあるおしゃれな雑貨屋に行きたい。大阪で何度も通った馴染みのおばちゃんがいる店でお好み焼きを食べたい。金沢に行って、日本海の海の幸を食べ尽くしたい。とにかく日本に行きたくてうずうずしているのですが、しばらくの間は無理ですよね。

今年(2021年)初めに『唐人街探案3』(邦題:『唐人街探偵 東京MISSION』)という映画を観ました。もともと1年前に公開される予定だったのですが、コロナの影響で延期となり、やっと見られたのです。

東京が舞台になっている映画で、思わずその風景を食い入るように見てしまいました。あの通りを自分も歩いたな、ここの近くで買い物したな、と思い出し、また日本に行きたい思いが募りました」

10年以上前の『おくりびと』が中国全土で大ヒット

同作品は探偵コンビが事件を解決していくというコメディ・サスペンスで、同作がシリーズの3作目(第1作はバンコク、第2作はニューヨーク)。

日本側の出演者は妻夫木聡、長澤まさみ、三浦友和などの俳優陣で、渋谷のスクランブル交差点(実際は栃木県足利市のセットで撮影)や、東京の代表的なスポットが数多く登場している。

2021年10月には、2008年に日本で公開された映画『おくりびと』が中国全土9400カ所の映画館で上映され、こちらも大ヒットしたというニュースがあった。SNSでは若者を中心に共感の声が集まった。

「日本人の死者の弔い方に感動した。涙が止まらなかった」「一人ひとりの命や尊厳をちゃんと大切にする国、日本は本当にすばらしい」「日本にこんな文化があったなんて知らなかった」