反日精神の中国人を変えた爆買いブーム

ナショナリズムの高まりにより、日本を侮辱するSNSの投稿が増えた一方で、日本映画にも感動の声が上がっていることは事実だ。中国人の友人は語る。

「日本を『上から目線』で見ている人たちと、日本文化に興味を持つ人々は出身も、学歴も、生活環境も全然違います。日本へのリスペクトの気持ちを持っている人々は、爆買いブーム以降、大幅に増えました。実際に自分の目で日本を見て変わったのです。その証拠がこのような映画の大ヒットに表れていると思います。

私も日本との距離は離れてしまったと感じていますが、今は日本料理を食べたり、ネットで日本の動画を見たりして、“日本補給”につとめています」

米中対立の影響で日本に対しても不信感を持ったり、デジタル後進国となった日本を蔑んだりする人々がいる反面、このような人々も大勢いる。

日本好きな人々がとくに多いのが、中国で最も洗練されている上海だが、コロナ禍になって以降、上海とその近郊には、いつの間にか「日本」があふれるようになった。

蔦屋書店、LOFT、無印良品にニトリ…

2020年10月、杭州に、同12月には上海に、日本の蔦屋書店がオープンした。上海店は「上生新所」という1924年にアメリカ人建築家によって設計された洋館の中にあり、店舗面積は約2000平方メートル。

中国語の書籍がメインだが、日本語の書籍や欧米の美術書、ギャラリースペースなどもあり、一般的な書店というよりも、落ち着いた文化サロンといったおしゃれな雰囲気を醸し出している。訪れた友人は「まるで東京・代官山の蔦屋書店がリニューアル・オープンしたのでは? というほど洗練された空間でワクワクしました」と話していた。

今や上海だけでなく、中国各地には蔦屋書店ばりのおしゃれ系書店は急増しており、同店が抜きん出ているわけではないが、日本旅行での体験を覚えている人々などを中心に人気が出ている。

同じくコロナ禍の2020年、上海には「ロフト(LOFT)」もオープンした。ほかにも「MUJI」(無印良品)、「ニトリ」、日本人経営のカフェや高級寿司など、「日本」関係の店はとにかく多く、いずれも中間層以上の上海人の間で、それらの店を利用することは「日常生活」の一部になっている。

2020年4月、中国・上海にある無印良品の旗艦店
写真=iStock.com/Robert Way
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こうした現象は2020年以降、急増した。自由に往来できなくなったことで、中国の中の「日本」の存在感は熟成されているのではないかとすら感じる。