“日本のパクリ”ではもう満足できない

経済的には、日本の影響力は小さくなっているが、文化レベルや生活の質という面では、まだ日本の存在感は落ちていない。

外部(海外)への渡航ができなくなり、内側(国内)に閉じ込められている状況下、ここ数年、海外で見聞を広めた中国人の文化への関心が熟成していったことと、コロナ以前から進められていた案件(日本など海外のデザイナーなどによるホテルや施設の建設)がいくつも完成し、そこに行ってよいものに触れることで、改めて知的好奇心をくすぐられ、「やはり、次は日本に行って、よいものを実際に見聞きしたい」という願望が強くなっている。

ある中国人はいう。「中国人の生活の質はコロナを経て、劇的に向上しました。日本のものをそのまま受け入れたり、共感できたりするくらいの高いレベルになってきています。だから、『なんちゃって日本』では、もはや満足できないのです」

「なんちゃって日本」とは2020年、広東省仏山市や江蘇省蘇州市などに出現した「ニセ日本街」のことだ。東京・新宿歌舞伎町を模したストリートや、怪しい日本語の看板が並ぶエリアで、若者たちが写真を撮りまくり、SNSに投稿していたことが日本でも報道されたが、すぐに著作権の問題が発生して、一部は撤去された。

中国人は世界でいちばん日本のことを観察している

「今後もこういうものがときどき出現しては、消えていくでしょう。中国にはいまだに著作権が何かもわからず、喜ぶ人がいるのも事実ですが、その一方で、成熟した日本ファンが着実に育ち、日本人が想像する以上に、日本行きを心から望んでいます。たとえ、日本で歓迎されなくても、日本を旅行したいと思っている人は多いと思います」(ある中国人)

コロナ後のこの世界がどのようになるのか、まだわからない。めまぐるしく変わる世界情勢のなかで、現状ではコロナに打ち勝ったかに見える中国はますます強大になり、米中関係、日中関係が好転する兆しはまったく見えないが、コロナで離れている間にも、中国人の日本に対する関心は高まっている。

ある中国人はこういう。「世界でいちばん日本のことをよく観察しているのが中国人だと思います。きっと逆もそうでしょう? 他国の細かいことまでは気にならないのですが、お互いの国の情報は気になって見てしまう。

この前、サッカーの試合(2021年9月8日に行われたワールドカップ予選)を見ました。中国は0対1で日本に負けましたが、SNSでは意外に冷静で、日本の強さを褒めている中国人が多かった。これからまだ中国は日本に勝つチャンスがある、と喜んでいた人もいました」