「あなた方は経済ばかり!」ゼレンスキー氏から猛批判

3月17日、ゼレンスキー・ウクライナ大統領がドイツ国会でオンラインスピーチをした。その直前、キーウでミサイル攻撃があったことで開始が遅れ、ようやく氏の顔がモニターに映し出されると、安堵あんどした議員たちが盛大な拍手。ところが、スピーチが始まったら、そこにはドイツに対する強烈な批判が盛り込まれていた。

「ガスパイプラインの建設は、(ロシアの)戦争準備だと散々言ったはずだ。しかし、あなた方の答えはいつも、『経済、経済、経済!』」

そういえば、確かについ最近までショルツ独首相はノルドストリーム2の中止を迫られると、「あれは民間事業なので……」と言い逃れをしていたものだ。

ドイツのオラフ・ショルツ首相(2022年4月2日)
写真=dpa/時事通信フォト
ドイツのオラフ・ショルツ首相(2022年4月2日)

ノルドストリームはその成り立ちからして、社民党の虎の子プロジェクトだ。とはいえ、現在、ドイツがエネルギーで窮地に陥ってしまった責任は、もちろん現社民党政権だけにあるわけではない。国の内外からのすべての警告を無視して、ここ10年、ロシアからのエネルギー輸入を急速に拡大し続けたのは前メルケル政権だ。

ノルドストリーム、脱原発…シュレーダー政権の遺産

メルケル氏のモットーは、「自由市場の原則に基づいて交易を深めていけば、どんな国にもおのずと民主主義が根付き、しかも、互いの依存度が増すので争いは鳴りを潜める」というもの。「日本国民は戦わず、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼しよう」という日本の精神と、少し似ている気がしないでもない。いずれにせよこの論を掲げて、ドイツ政府はロシアのみならず、昨今では中国との結託をも大いに正当化してきた。

1本目の海底パイプライン「ノルドストリーム」が開通したのは2011年のことだ。これは05年、まもなくメルケル氏に政権を明け渡さなければならないかもしれないと悟った当時のシュレーダー首相(社民党)が、選挙の直前に、かなりグレーな手法で締結に持ち込んだ世紀の大プロジェクトだった。