ただ、この時のコロナ復興基金は、総額の9割が「欧州グリーンディール」や「デジタル戦略」との抱き合わせになった。すなわち、融資にせよ、給付にせよ、コロナ救済資金の申請条件は、ただの復興ではなく、温暖化対策やデジタル化に資する使い道でなければならなかった。

欧州のパワーバランスが崩れつつある

そして、おそらく今回、それと同じような公債が、マクロン・ドラギ組によって、インフレショックを和らげるといったような名目で持ち上がる可能性が高い。そして、この動きは今回こそ、EUを間違いなく財政統一の方向に誘導すると想像される。そうなれば、ドイツの経済優位は次第に崩れていくだろう。

もともと、社民党と緑の党はEUの財政統一には賛成の立場をとっており、20年にEUコロナ債を率先して作ったのも、当時、財相であったショルツ氏だった。なお、政権党の一角を担う自民党は、本来ならば財政規律を強化することを公約としていたが、事態はまさにその反対方向に進もうとしている。

いずれにせよ、今、ドイツの立場は極めて弱い。「ドイツはロシアに依存してはいない」という主張が脆くも崩れ、ノルドストリーム2が事実上停止に追い込まれ、さらに、もうしばらくはロシアのガスを買い続けることを、EUに大目に見てもらわなければならない。つまり、この追い詰められたような立場が続く限り、ドイツが共同債に強く反対することはできない。

ロシアのウクライナ侵攻は、思いもよらぬヨーロッパの力学の転換をもたらすかもしれない。

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