メンズコスメ市場はコロナ禍でもプラス成長を続けている。好調の要因は何か。マーケティングライターの牛窪恵さんが、市場を開拓した「先駆け」といわれるレスプリの開発者に話を聞いた――。

なぜ男性コスメが伸びているのか

コロナ禍で、2021年も落ち込みが指摘されたコスメ市場。マスクで崩れたり隠れたりする「メイクアップ化粧品(ファンデーションや口紅など)」は、20年が前年比-25%、21年も同-7%と、2年連続の減少となりました(出典:インテージ「知るギャラリー」21年11月25日 公開記事)。

レスプリ 取締役兼商品事業本部長 長島幹孟さん
レスプリ 取締役兼商品事業本部長 長島幹孟さん(写真提供=レスプリ)

一方でこの時期、むしろ伸長傾向だった市場もあります。それが基礎化粧品全般と、「メンズコスメ」市場。同じくインテージの調査では、コロナ禍でとくに男性が購入した化粧品市場が、20、21年といずれも顕著にプラス成長(前年比)にあったことが判明。21年には調査開始以来、初めて400億円を突破(406億円)しました。

こうしたメンズコスメの伸びを、「コロナ禍でリモートワークが増え、(PC画面で)男性も自分の顔を見る機会が増えたから」とする報道も多いのですが、若者に人気のメンズコスメブランドを展開するレスプリの取締役兼商品事業本部長・長島幹孟さんは「それだけではないはず」といいます。

30代半ば以上とZ世代では関心の方向性が違う

レスプリは、19年4月に「LIPPS BOY(以下、リップスボーイ)」を発売。21年12月~22年2月の同ブランド出荷数量は、目標比113%と好調に推移しています。

「一般に、30代半ば~40代以上の男性は、『悩みを隠す』目的で、美容に関心を示す傾向が強い。でもいまの10代後半~20代の若者たち(おもにZ世代)の多くは、違います」

リップスボーイの商品。
写真提供=レスプリ
リップスボーイの商品。

いわく、30代半ばより上の男性は、「濃いヒゲの剃り跡を、ファンデーションで隠したい」など「マイナスをゼロに」の傾向が強い。彼らは確かに、リモートワークが引き金となり、「どうにかしなければ」とコスメに手を伸ばしたかもしれません。

ところが、Z世代の若者は「コロナ前から『もっとキレイに、カッコよくなりたい』とのモチベーションが高かった」と長島さん。確かに、メンズコスメ市場の伸びはコロナ前から顕著で、2015年以降は毎年、右肩上がりの状況が続いています(インテージ調べ)。

そんな彼らの「キレイ&カッコイイ」への欲求を高めたのはSNSやユーチューブなどの動画だろうと、長島さんはいいます。

「とくに数年前から、メンズコスメに関心が高い男性たちが『レディース(女性用)コスメ、使ってみた』などの動画を次々と投稿するようになった。それを見た若い男性たちが、自分もやってみようかなと、主体的にコスメを選ぶようになりました」