数ある「経済圏」の中でも最大級の規模を誇る楽天経済圏。一方、ドコモをはじめとする通信大手は経済圏の構築に苦戦している。マーケターの桶谷功さんは「楽天は小売からスタートしているので、巨大な会社になった今でも、小さな売り上げを積み上げることの大切さをわかっている。ドコモが経済圏を構築できるかどうかは、この小商いができるかどうかにかかっている」といいます――。
2022年2月25日、都内で行われた楽天モバイルの記者会見であいさつする楽天グループの三木谷浩史CEO。
写真=AFP/時事通信フォト
2022年2月25日、都内で行われた楽天モバイルの記者会見であいさつする楽天グループの三木谷浩史CEO。

楽天だけがなぜ経済圏をつくれたのか

こんにちは、桶谷功です。

最近、「○○経済圏」という言葉をよく聞くようになりました。なかでも代表的なのが「楽天経済圏」です。これは消費者が生活にかかわるサービスをすべて楽天グループに統一することで、楽天ポイントを効率的にためることができるというもの。楽天からすれば、消費者を迎え入れる優れたしくみということになります。

ドコモやソフトバンク、auなどほかの通信系も、楽天と同じような経済圏をつくろうとしていますが、楽天にはとても及びません。果たして楽天とほかの会社では、いったい何が違うのでしょうか。

楽天では、「楽天市場」に始まり、「楽天カード」「楽天証券」「楽天モバイル」「楽天トラベル」など、生活のどの場面でも楽天のサービスがあるという状態を実現していますから、これも理由のひとつでしょう。しかしこれだけだったら、ほかの通信系もやっています。ドコモも「dトラベル」「dショッピング」「dブック」など、ほとんどの生活領域をカバーしている。

楽天とほかの通信系との違いは、楽天は先にECサービスがあり、そのあとから通信系に入ったのに対し、ほかの通信系は順番が逆で、先に通信事業があり、あとからECサービスを始めたというところでしょう。楽天は、2006年の時点で、早くも「楽天エコシステム(経済圏)」構想を発表しています。

ショッピング取扱高業界シェア30%を目指す楽天カード

楽天はご存じのようにインターネット・ショッピングモール「楽天市場」からスタートしました。ネットで買い物をするにはクレジットカードが便利です。「楽天市場」では、支払いを「楽天カード」でおこなえばポイントが効果的にたまるようにしました。楽天経済圏の拡大を図るため、楽天IDを共通にするなど計画的に事業を構想していったことが伺われます。

さらに、楽天のグループのサービスを使えば使うほど、「楽天市場」でのポイント還元率が(最大14倍まで※2022年4月1日時点)高くなるというSPU(スーパーポイントアッププログラム)があります。自分の生活で使っていたサービスを楽天サービスに切り換えると、ポイント還元率が上がります。ユーザーは効率的にポイントをためることができ、また、ためたポイントは、「楽天市場」だけでなく他のサービスで利用することができます。

その結果、「楽天カード」は大成功し、発行枚数2500万枚、年間ショッピング取扱高14兆5000億円、業界シェアは22.5%となっています(2021年12月時点)。これをさらに30%に上げるという目標を立てています。