全体から見たら小さいビジネスにすぎない
ドコモのスマートライフ事業がなぜ精彩さを欠いているかというと、いちばん大きな理由は、通信事業で7200億円もの営業利益があるからでしょう。それに対してスマートライフ事業は594億円で、ドコモグループ全体の8%にすぎない。しかも8%の中身もコマ切れになっている。スマートライフ事業に10個の領域があるとしたら、ひとつ平均59億円です。ドコモから見たら本当に小さいビジネスです。
しかもスマートライフ事業はドタバタと忙しいし、失敗するかもしれないし、すごいスピードで競合が攻めてくるのに、リソースも限られている。
ドコモに限らず、こうしたビジネス構造がある場合、経営会議などで「こういう事業で、こういう投資をしようと思っています」と言っても、「本当に成功するの? それでいくら儲かるの?」「それっぽっちなの? やめたら?」となりがちです。
ドコモが成功するために必要なこと
しかし楽天はEC、つまり小売からスタートしているので、発想が全然違います。巨大な会社になった今でも、一つひとつの小さな売り上げを積み上げることの大切さをわかっている。
これからドコモのスマートライフ事業がどこまで成長するかは、この小商いにどれだけ本腰を入れられるかにかかっていると思います。それぞれのサービスを、利用者にとってどれだけ魅力的なものにしていけるか。そのためにはおのおののスマートライフ事業を独立した子会社にすることが考えられます。いまスマートライフ事業は、一事業として通信事業と同列で扱われています。これを別会社・子会社化していけば、通信事業とは別の事業を担う企業として、大きく変われる可能性はあるかもしれない。かつてNTTからドコモが派生したように、今後はドコモから子会社が生まれてもいいのではないでしょうか。
(構成=長山清子)