背景に「血で血を洗う」中国市場の価格競争

足許、米電気自動車(EV)メーカーである、テスラの先行きに不透明感が高まっている。これまで同社は、世界最大の新車販売市場である中国および、第2位の市場である米国で生産能力を構築し業績は拡大してきた。ところが、その勢いに陰りが見え始めている。今年1月~3月期の収益は約4年ぶりの減収減益だった。

テスラのイーロン・マスクCEO(2024年1月22日)
写真=EPA/時事通信フォト
テスラのイーロン・マスクCEO(2024年1月22日)

テスラの業績減速の背景には、中国のEV市場の競争激化がある。特に、EV分野の価格競争は熾烈を極めている。2019年、中国国内で約500のEVメーカーが政府に登録された。どう見ても、過剰メーカーがひしめいていた。

その結果、価格競争は激化した。不動産バブル崩壊による景気低迷も深刻化した。EVメーカーは100社程度に淘汰されたとみられる。中国EV市場は、多くの企業が血で血を洗うような激しい価格競争を繰り広げる、いわゆる“レッドオーシャン”の状況に陥っている。

「EV一本足打法」が裏目に出たか

それに加えて、米国市場でもテスラの成長の勢いは鈍化している。航続距離の短さ、充電インフラの整備の遅れなど、消費者の好みはハイブリッド(HV)やエンジン車に向かい始めた。テスラの新型モデルの供給体制に不安を強める消費者も多い。

今後、中国EVメーカーの追撃はさらに厳しさを増すことだろう。テスラの打開策が本格的な成果を上げるか否か、先行きは見通しづらい。

ただ、中長期的に、脱炭素などで主要先進国のEVシフトは加速する。米国政府としてもテスラを破綻させるわけにはいかないはずだ。半導体やEV分野で、米国が対中制裁措置を強化するリスクも上昇傾向だ。EV一本足打法のテスラが環境変化にどう対応し収益力を立て直すか、不確定な要素は多い。