最終利益が前年同期比55%減に沈んだ理由

テスラの今年1月~3月期の売上高は、前年同期比9%減の213億100万ドル(1ドル=155円換算で約3兆3000億円)だった。最終利益は同55%減の11億2900万ドル(約1700億円)と落ち込み幅が大きかった。

最重要市場の中国EV市場の“レッドオーシャン化”はかなり強烈だ。テスラは、上海に同社最大の工場を建設し、中国向け、海外向けのEV生産を強化した。中国政府は、テスラへの補助を実施し、低コスト生産体制の強化を支援した。

テスラから中国のEVメーカーへの技術移転が加速した。中国政府はEV分野の産業政策も強化した。EVメーカーではBYD、埃安(アイオン)、五菱(ウーリン)、車載用バッテリーメーカーのCATL、バッテリー絶縁材など部品メーカーの上海エナジーなどに土地の供与や研究開発、生産強化の補助金を支給した。

シャオミやファーウェイなどの、IT先端企業のEVへの新規参入も増加した。産業補助金などを支えに中国勢のEV生産能力は急速に拡大した。生産コストも低減した。ブランドは違うが性能はあまり変わらないEVが市場にあふれ出た。

値下げ競争では中国製EVにかなわない

供給が需要を上回り、過剰生産能力は累積している。それに伴い、値下げ競争が激化している。相手が価格を下げれば、より大幅に値下げをする。値下げ競争に拍車がかかり、淘汰される企業も増えた。現状、中国EVメーカーで安定的に収益を獲得できるのは、BYD、アイオン、ウーリンなど一部に限られるとの見方もある。

熾烈な競争で競争企業が互いの体力を削ぎあう、“レッドオーシャン化”は鮮明だ。中国市場で、テスラも値下げせざるを得ない状況だ。しかし、テスラは、競合する中国勢とのコスト負担の差を埋めることは難しい。積みあがる在庫を圧縮するために、追加の値下げが必要な負の循環にテスラは陥っている。

不動産バブル崩壊による個人消費の停滞なども深刻だ。中国市場でテスラの採算は悪化し、安定的に獲得することは難しくなった。