標準規格になったテスラを見捨てられない米国

テスラは、米国でも収益体制の立て直しを急ぐ。5月10日、マスク氏は閉鎖が報じられたスーパーチャージャー(急速充電器)部門の投資拡大を表明した。新たなパートナ企業の獲得も目指すようだ。

マスク氏の方針修正には、米国政府の意向が影響したとみられる。テスラのスーパーチャージャーは、現在、世界最大の充電システムに成長した。テスラの規格が米国のEV充電の標準規格になっている。米国にとって、EVは脱炭素を加速するために欠かせない。

急速充電網の整備は、EV利用のインフラ強化に必須だ。テスラの事業が行き詰まることは、米国経済にとって損失になる恐れがある。米国政府はテスラに対して、他企業と連携し充電インフラ整備の促進を求めたとの見方もある。テスラの米国でのEV生産に関しても、他社との連携などが進むかもしれない。

米国政府は、過剰生産能力を抱える中国自動車産業への警戒を強めている。11月の大統領選挙の結果次第で、米中がEV関連分野などで効率関税をかけあう恐れもある。世界的な貿易戦争に発展するリスクは上昇している。

全方位戦略をとるトヨタと明暗が分かれる格好に

米中両にらみで事業の立て直しを進めるテスラだが、今のところ、その成果は見通しづらい。中国はEV支援策を一段強化する構えだ。政府は、BYDなどに加え、中国第一汽車集団、東風汽車集団、重慶長安汽車の国有大手3社のEV生産能力を引き上げる考えを示した。今後、テスラは一段と苛烈な中国EV勢の追撃に直面するだろう。

トヨタなど大手自動車メーカーは、エンジン車、HV、PHV、EVなど全方位型の戦略を強化している。いずれも、米国、中国など主要市場の当局の政策を見ながら、生産・供給体制を強化している。先端分野での米中対立の懸念が高まる中、主要自動車メーカーによるリスク分散はさらに加速するだろう。

1月~3月期、テスラの営業利益率は5.5%だった。前年同期の11.4%から低下した。「テスラはマグニフィセント・セブンから脱落した」と見る投資家もいる。中国市場での収益向上も容易ではないだろう。EV専業メーカーのテスラがどのように収益の挽回を目指すか、先行きの不確定要素は増加傾向だ。

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