李強首相と会談し、「自動運転の実用化」を表明
足許、テスラのイーロン・マスクCEOは中国事業の立て直しを急いでいる。4月下旬、突如マスク氏は訪中し、李強首相と会談した。同氏の訪中は、テスラにとっての中国の重要性を確認する重要な機会になった。
会談において、マスク氏は、百度(バイドゥ)と提携し、自動運転の実用化を目指す考えを示したようだ。事前のXへの投稿で、マスク氏は、「フル・セルフ・ドライビング(FSD)と呼ばれる、運転支援システムの実用化はすぐ可能になるかもしれない」と述べた。
会談とほぼ同じタイミングで、テスラはAIへの投資の拡大も発表した。また、4月上旬に中止が伝わった低価格車の開発に関して、決算説明会の場で投入を急ぐと方針を撤回した。いずれも、中国市場の失地回復が念頭にあるだろう。
現在、米国を中心に、テスラはAIや自動運転などのソフトウェア開発を強化している。それを、テスラは中国企業と共有する。低価格車の生産体制を強化する中で、中国での直接投資も積み増す可能性は高い。
“手土産”の代わりに規制緩和を依頼か
それは、中国政府が国内企業への技術移転を強化するために重要だ。テスラは手土産を渡す代わりに、中国政府に規制緩和を依頼し、需要の獲得を目指しているようだ。
会談後、中国は安全保障上の理由から規制した政府機関へのテスラ車乗り入れを解除した。中国当局が、テスラの自動運転システムを暫定的に承認したとの見方もある。テスラの投資拡大は中国にとって、雇用や低価格EVの輸出増加の支えとしても重要だ。
一方、半導体やAI、データ主権分野などで米中の対立は先鋭化している。米国や欧州委員会は、中国製EVの関税を追加的に引き上げる恐れもある。中国が過剰生産能力を輸出し、雇用が奪われるとの米欧の懸念は上昇傾向だ。
それでも、テスラが最大市場の中国から離れることは難しいだろう。マスク氏の訪中は、中国が世界の自動車メーカーなどに重要であることを改めて確認する機会になった。