商品を試せる“場”が必要

当時は、男性だけでなく女性もターゲットにしていましたが、「オシャレな男性が注目され始め、メンズファッション誌の切り抜きを手に『こんな感じで』とやって来る男性が増えたようです」と長島さん。

2000年代に入ると、的場代表がたびたびメンズ美容関連の取材を受けるようになり、「潜在的なニーズは確実にある」と確信したといいます。

もっとも、「僕も含めて、一般に男性は見栄っ張り」だと長島さん。

たとえば、街角でティッシュを配っていて「あ、欲しいな」と思っても、向こうから手渡してくれなければ、なかなか自分から取りに行こうとは思わない。ニーズはあれど、実際に手を伸ばしてもらうためには、商品を試せたり使い方を教えてもらえたりする“場”がないと難しいと考えていたそうです。

なぜファンデではなくコンシーラーか

そんななか、お勧めできる場としてのメンズビューティーサロン「LIPPS(リップス)」は、着実に店舗数を伸張。22年3月末現在、全国で23店舗を展開し、年間来店客数は約40万人に上ります。

レスプリのヘアワックス
写真提供=レスプリ
レスプリのヘアワックス

「そのうち8~9割が、10代後半~20代のおもにZ世代の男性です」(長島さん)

リップスのサロンには、美容感度が高い「スタイリスト(美容師)」が存在します。17年以降、ヘアワックスなどにとどまらず、さまざまなメンズコスメの開発に着手したリップスは、まず彼らに女性用のファンデーションやBBクリーム、リップクリームなどを試してもらったとのこと。

とくに、唇に塗るとほんのり色づくリップバーム(保湿力に優れたリップクリーム)は、「つけるだけで気分がアガる!」と男性スタイリストに好評で、化粧品のOEM企業の協力を得て、試作品を何度も作ったそうです。

一方で、ファンデーションは「いきなり肌全体に塗るのは、初心者の男性にとってハードルが高い」と考え、コンシーラーを2色出してみたとのこと。

一般に、女性市場におけるコンシーラーは、ファンデーションでカバーしきれない目の下のクマやシミなど、スポットをカバーするためのもの。二重、三重にファンデーションを塗ると、いわゆる「厚塗り」になってしまうからです。

そんなコンシーラーを、リップスは「お試し」感覚で使えるものにしよう、と考えた。気になる箇所に試しに塗ってもらい、メンズコスメ初心者の男性に「肌に何かを塗ると、キレイになれるんだ」と、実感してもらおうというのです。