ラーメンをより美味しく食べるにはどうすればいいのか。50店以上のラーメン店のロゴを手がけたデザイナーの青木健さんは「どんな料理にも、より美味しく味わう食べ方がある。ラーメンの場合、丼のどこから麺を抜くかによって味わいが変わる」という――。(第2回/全2回)
※本稿は、青木健『教養としてのラーメン ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネス 50の麺論』(光文社)の一部を再編集したものです。
やたらと麺硬めを頼みたがる人たち
若い頃、先輩や上司とラーメン屋さんに行くと、「この店は麺硬めが旨いんだぞ」なんて、したり顔で言われたものでした。これは好みの問題ですので、個人の自由というのを大前提として、以下を書いておきます。
麺硬めというのは、味濃いめや油多めなどと同じく「刺激の強さ」です。ですから、特に若い人にとって魅力的であるのは、肉体的に自然なこと。ただ、ラーメンの麺は、そもそも小麦粉の品種やブレンド、水分量、太さ、長さ、形状など、店によってまったく違うものです。必然的に適正な茹で時間も異なります。
麺は、茹でること(加熱)によって小麦粉のデンプンが水を吸って糊化し、独特の質感やコシが生まれる。つまりご飯と同じです。極端な話、茹できっていない麺は、炊きあがる前の米を食べるようなもの。なんでもかんでも麺硬め、という人が増えすぎたせいでしょうか、近年は「麺硬めお断り」という店も目立ってきました。
これは意固地なのではなく、水分量まで調整し、状態を確認しながら茹でている麺を、お客様により良い品質で召し上がってほしい……という、店主の気持ちでしょう。初めての店ではそのまま食べて、もし違和感があれば次回から頼んでみればいい。
私自身も、麺に少し硬さが残っていると感じたら、再度伺ったときに「少し長めに茹でてもらうことはできますか?」とお願いしてみたり。どのお店も気持ちよく応じてくれました。