どの店でも麺硬めを頼むのは大間違い

味のバランスにより、硬め、やわらかめ、それぞれ似合うラーメンがあります。九州の豚骨ラーメンには、バリカタやハリガネ、粉落としといった硬さの指定がありますね。私も何度か現地で食べ歩いていますが「バリカタ」という注文を1度も聞いたことがありません。なにも言わないか、せいぜい「カタ」。

私が20年以上通う近所の店では、麺の硬さに慣れた頃、よく粉落としで頼んでいました。昔、それを知っていた知り合いの店に行き、普通の硬さで頼んだのに、粉落としで出してくれたんです。

ところが食べてみるとニチャニチャとして美味しくない。どの店でも麺硬めなどと言うのは大間違いだと痛感しました。ちなみに、替玉は同じ硬さで頼んでも、より硬く感じるもの。それを好む人のため、はじめに具入りのスープだけ出して、麺を替玉のように入れてくれる、「麺あと入れ」が可能なお店もあるのです。

「まずはスープを飲んだほうがいい」と言われているのはなぜか

レンゲの正式名称は「散り蓮華」。蓮の花びら1枚に見立てられているのです。スープを飲む際、このレンゲでと丼からダイレクトでは、感じ方が変わってきます。舌は、先、両サイド、奥など、場所により感知する味覚が違います。レンゲで飲むと舌の奥へ運ばれやすく、味わいが偏る傾向があると言われます。ただ近年はこの舌の場所説にも否定論があります。

ラーメンのスープとレンゲ
写真=iStock.com/karinsasaki
※写真はイメージです

では必ず丼から味わうべきかというと、これもそうとは言えない。ラーメンによっては、表層に油脂が多く浮いているので、出てきてすぐの状態で丼から飲んでしまうと、背脂や香味油ばかりが口に入ってしまいかねません。ただ、やはりレンゲと丼では、口にした感覚は違います。

スープの温度、量、唇に当たる感触も異なるし、レンゲだって陶器、木、プラスチックと材質もさまざま。どちらから飲むのが正解というのではなく、ラーメンによって臨機応変に両方から試したい。女性が丼から飲むなら、量が減って軽くなってからでも。

食べはじめはスープから飲むのがセオリーとされています。その理由としては、麺から啜ると、麺に残る茹で湯がスープと混ざってしまうから。少しでも純粋なスープを味わうための工夫ですね。また、スープから飲むにしても、麺に残った茹で湯が混ざらないうちに、端のほうから味わうなど。

これらも絶対ではなく、あきらかにそうしたほうがいい店と、特に気にしなくていい店とあります。ある店主曰く「はじめにスープから飲んだら、それはスープ(だけ)ですよね。でも麺から啜れば、スープも一緒に口に運ばれる。それでこそ『ラーメン』じゃないですか」。これには虚を衝かれました。一理ありますよね。