味のマンネリ化を防ぐ「卓上調味料」

またある店では麺から食べることを推奨しています。ここのラーメンは、豚骨スープの表面にニンニクを揚げてつくったマー油が浮いており、麺から食べ進めることでスープが攪拌かくはんされ、苦味のあるマー油がなじむというわけです。

つけ麺では、はじめに麺をつけ汁に浸さず、そのまま麺自体の風味を味わったりします。以前はバカにされたものですが、今は多くの人がそれを楽しんでいる。蕎麦と同じように、麺と汁の味、つけ汁の塩分や濃度を確認しておけば、どれくらい麺を浸せば自分の好みになるか……がわかります。どんなラーメンも型にとらわれず、自分にとって、できるだけ良い状態で接したいですね。

ラーメンが苦手、という人はあまりいないですが、まれに遭遇したときは、それとなく理由を伺っています。ラーメンは早く食べなきゃいけない、啜るのが苦手、などですが、中でも多い答えが「ずっと同じ味だから」。

ラーメン好きとしては「そうかな?」と感じますが、その理由から何十年も食べていない人も。そこで、ラーメンの人気ジャンルのお店を見てみると……。博多豚骨は、麺の硬さをヤワ~粉落としまで、かなり細かく指定でき、卓上には辛子高菜、胡麻、紅生姜などがある。家系は、麺の硬さ、味の濃さ、油の量を指定できるうえ、卓上には豆板醬、ニンニク、おろし生姜、酢などが並びます。

豆板醤・ニンニクなどをトッピングしたラーメン
写真=iStock.com/JianGang Wang
※写真はイメージです

最終的に食べ方を決めるのはお客さん

二郎は、野菜の増量、ニンニクの有無、味の濃さ、アブラ(背脂)の有無などがサービスで変えられる。油そばや汁なしはトッピングメニューが豊富だし、ラー油、酢、マヨネーズなどを加えるのが前提のような食べもの。つまり、こうした人気のジャンルや店は、味を変えられるアイテムが揃っているのです。

飴やミント菓子をなめていて、最後のほうで噛んで割ってしまったりしますね。あれも同じ味に口が慣れるため。割って表面積を増やし、味を濃く感じさせる、無意識の味変効果です。そういう意味ではつけ麺も、つけ汁の浸し方によって味を調整できますね。

以前「ダブルテイスト」なる味変ラーメンが流行りました。スープの中に仕込んだタレが溶け出したり、別添えのジュレで味を変化させ、口を飽きさせないメニュー。ただこれは店のやり方であって、客の自由さとは違います。

都内にある博多豚骨ラーメン店「田中商店」では、替玉を何度かしてスープが減ると、スープを足してくれます。かなり行き届いたサービスです。あるとき、田中店主が何度めかの替玉をした客にスープを足しましょうかと声をかけたところ、「いらねえ。俺はスープが少なくなったところに高菜を入れて、まぜそばみたいにして食うのが好きなんだ」と言われてしまった。

ここで店主は気づいたそうです。店のエゴを押し付けても仕方がないのだと。店主は著書に「お客様が手に持った瞬間、そのラーメンはお客様のもの。その人が美味しいと思う食べ方をしてもらうのが一番」と書いています。とはいえ客側としては、失礼のない範囲にすべきでしょう。卓上にあるからといって常識外れな量を入れたり、食べきれない量と知っていて注文するような行為は慎まねばなりません。