効率低下要因を洗い出しおのおのの解決策を考える

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この課題解決のためには、まず、「開発部門の効率を低下させている要因は何か」を洗い出し、その各要因について解決策を考えてゆく。設計開発をプロセスごとに細分化し、各プロセスごとに問題を探ってゆくと、「手戻り」と「スケジュール遅延」による非効率が、全体の75%以上を占めていることが判明した。

手戻りとは、モデルの修正、設計の再検討、費用の再見積もりといった、1度済んだはずの工程をやり直すことを意味する。顧客である自動車メーカーから「やっぱり直してくれ」と言われて直すのは仕方ないとしても、最初の詰めが甘かったために一度作った金型を作り直す必要が出てきたり、社内でのコミュニケーションの齟齬などから、試作品を作ってみたら顧客の要求している仕様になっていなかったといったトラブルが起きていた。これによって時間とコストに大きな無駄が出ていたのである。

このケースでは、すべての無駄をなくすことで、理論的には45%効率アップさせられることがわかった。ここまで明らかになれば、開発効率30%向上の道の入り口が見えてくる。

このように対処すべき問題を発見するうえでは、課題を分解することが非常に有効である。

経営危機に陥った自動車メーカーの場合、構造改革の前提として、事業領域ごとに細分化して問題点を洗い出した。外資の傘下に入った生命保険会社の場合、まず全社を直接部門と間接部門に、ついで直接部門をフロント(営業)とバックオフィスにといった具合に機能ごとに細分化し、おのおのについて効率化とコスト削減のために可能な施策を検討した。

イシューツリーのような論理思考の手法を使って問題となりうる可能性をすべてマッピングし、1つずつ消去してゆけば、課題の分解は誰にでもできる。だが実際には、どこまで細かく具体的にしてゆくかという分解の深さは、人によりまちまちだ。実はこの分解のレベル、すなわち深さによって、当事者が課題解決に向けて動き出せるか、何をしていいのかわからずに止まったままで終わるのかという違いが出てしまう。

自動車関連事業の整理・合理化の場合、車種と車台の統合がもっともコスト削減に効くことは常識だ。開発期間の短縮や購買費の削減も、いわば定番のメニューだ。しかし単に「コスト削減のために車台を統合すべきである」というレベルまで分解しておしまいでは、課題解決に向けて動き出すことはできない。

たとえば車台を統合するといっても、「どの車とどの車を統合するのか」「2車種を統合するのか、それともさらにもう1車種を統合すべきか」といった問題が残っている。このとき車台統合にかかる費用、そして統合により削減されるコストが具体的な数字として出ていなければ、車台統合を行うべきか否かの経営判断を下すことはできない。

そうした数字を出すためにはもちろん、そもそもAという車種とBという車種の車台統合が技術的にも商品戦略上も取りうる選択肢なのか否かさえ、詳細な検討抜きにはわからない。
「事業コスト削減」という課題解決に向けて動き出すためには、「車台の統合」という課題は、さらに具体的に細かく分解されなくてはならない。