会社人間の「魔のトライアングル」から抜け出すには

ワークライフバランスという言葉が急速に広がっている。その意味を「女性のための仕事と家庭の両立支援」や「仕事を減らして生活のゆとりを持つこと」と理解している人も多いだろう。確かに、国がワークライフバランスを推進する背景には、両立支援の充実や働き方の見直しによって少子化を食い止めようという思惑が透けて見える。しかし、企業が利益を追求する組織である以上、どのような施策も企業にとってメリットのあるものでなければ浸透させることは難しい。

ワークライフバランスを推進する意義は、社員が仕事と私生活のバランスをとりながら、持てる能力を最大限に発揮できるようにすること。そしてそれによって生まれた社員の高い満足度、会社への貢献意欲や仕事への責任、成果へのこだわりが、企業の成長・発展に寄与することにある。つまりワークライフバランスは、企業と個人、両者のWIN・WINの関係を促進する考え方なのである。単に少子化対策やコンプライアンス、福利厚生の一環としてのみワークライフバランスを捉えては、その本質を見誤ることになる。

ここでは特に「学習する時間を確保し自己成長につなげる」という面からWIN・WIN型ワークライフバランスのすすめを強調したい。

終身雇用の崩壊で、日本でもキャリアが自己責任となり、人生やライフスタイルについて主体的に考えなければならない時代となった。

その時代に生きる人たちにとって、「自分を成長させるための時間を確保する」ことは重要事項だ。このような視点で考えると、ワークライフバランスは、実は子育てや家庭との両立に悩む女性だけの問題ではなく、働く男性にとってこそ重要な課題だといえる。

都市銀行の法人営業部に勤務するAさんは38歳。3年前に受けた研修をきっかけにコーチングに興味を持ち、現在はコーチングやファシリテーション等、組織開発に関わるNPOに所属し活動を続けている。2人の子どもの父親でもあり、共働きの妻と協力しながら仕事に子育てにと奮闘しているAさんの、どこにそんな時間があるのかと思うのだが、Aさんは楽しそうにこう語る。

「仕事以外の仲間とわいわいやるのがいいんです。いろんなヒントをもらえるし、学んだことを職場で実践できるのもいい。職場の仲間だと愚痴の言い合いになってしまい、結局、何も変わらないんですよね。家族と過ごす時間もNPOの仲間と過ごす時間もボクにとっては大切な時間。自分のために時間を確保すると決めてから、一層効率よく仕事をするようになりました」