仕事の再設計で空いた時間を社員に返却する 

仕事の再設計を成功させるポイントは3つある。

(1)仕事と理想的な社員像についての既存の価値観・規範を見直すこと
(2)習慣的な仕事のやり方を見直すこと
(3)仕事の効率と効果を向上させ、同時に仕事と私生活の共存をサポートすること

仕事の再設計で、生産性や社員の価値を高めた企業の事例を紹介しよう。

プラスティック加工を手がけるクリロン化成では、優秀な女性研究者のCさんが出産で退職願を申し出たことをきっかけに職務内容の見直しを行い、生産性を高めることに成功した。Cさんが出産後も継続して働くためには、残業・休日出勤も厭わないこれまでの仕事のやり方では負担が大きすぎる。

そこで、社長が考えたのはCさんの仕事の内容を洗い出すことだった。彼女がどのような仕事をしているのか1カ月の職務内容をすべて細かく書きだして、区分・難易度・気がかり度別にランク付けを行うことにした。

区分は創成ワーク(知識と工夫で新しい「知」を創成する)、3Cワーク(同僚や他部門との相談・協議・コミュニケーションを要するもの)、ルーチンワークの3つに分類された。難易度は、実践判断面や技能・知識面別に5段階、気がかり度は「いつも気になってとても負担」レベルから「全然気にならない。まったく負担でない」まで5段階に分けられた。

そして、ルーチンワークや難易度の低い単純作業はパートスタッフや派遣社員に依頼。専門的業務は同じ部署のスタッフに振り分け、業務内容によっては管理情報課・広報課などの他部署にも引き継ぎを行ったのである。