このように業務の再配分を行うことで、育児休業から復帰した女性研究者Cさんは育児をこなしながらも自分にしかできない専門的な仕事に集中することができ、さらに高い成果を発揮するようになった。

クリロン化成ではこのケースをきっかけに、「職務分担表」の作成・活用がシステム化され、育児休業取得時のみならず配置転換・異動、事業の再編など、様々な場面で活用されている。

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従業員の自己啓発に対する支援方法

またアパレルメーカーのT社は、残業をしない会社として有名である。91年に社長の発案で週1回の「NO残業デー」を開始。はじめはなかなか守られなかったが、社長の強いイニシアチブのもと、管理職による職場巡回や強制的な消灯などを行い徐々に浸透。取引先にも理解を求め、03年からは毎日が「NO残業デー」となった。

T社では、定時に帰るために様々な工夫を行っている。現場でのスピーディな問題解決のために「早朝会議」を行い、最長でも1週間以内に解決策を発表する「デッドライン管理」を実施。昼休み終了後の2時間は、電話や打ち合わせ、社内ミーティングなどを一切禁止し自分の仕事に集中する「がんばるタイム」を設けるなどである。

会社側は仕事の再設計によって、空いた時間を社員に返す。そして社員はそれぞれが子育てや家事、勉強や趣味などに時間を使う。心身ともに充足した社員は改めて会社への貢献意欲や仕事への責任感を抱き、結果的に企業の成長・発展に寄与するという好循環が生まれる。冒頭で述べたように、会社が個人のワークライフバランスをサポートする意義はこの好循環を生み出すことにある。

ここで大切なことは、そうやって生まれた時間を自律的に管理し有効に使う能力が、個人の側にも求められるということだ。誰にとっても1日は24時間しかない。「この仕事が終わったら」と思っていても、仕事は永遠になくならない。働き方を見直して、自分の時間を確保する。そのことを意識的に行ってみてほしい。