免疫力を高めるためにはどうすればいいか。医師の松生恒夫さんは「グルタミンは免疫反応の中心であるリンパ球の働きを活発化させる。生魚や生卵など、グルタミンを多く含む食べ物を普段から意識的に摂ることをおすすめする」という――。

※本稿は、松生恒夫『健康の9割は腸内環境で決まる』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

白米に生卵をのせて醤油をかけた卵かけご飯と生の卵
写真=iStock.com/hungryworks
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腸の専門家が教えるグルタミンの重要性

2020年の春は、新型コロナウイルスが世界中の大問題となりました。この新型コロナウイルスに対する治療薬が存在しないため、多くの人が不安にかられました。こうなると個々の人々が新型コロナウイルスに負けないよう、免疫力をアップしなければなりません。

今もさまざまなメディアで「免疫力をアップするには」ということが論じられています。そして、あるメーカーのヨーグルトを食べるといいなどといわれているのです。

では、免疫の基本となるのは、何なのでしょうか。私自身は、免疫学が専門ではなく、大腸内視鏡検査や胃・十二指腸内視鏡検査を施行することが専門です。そこで私自身が免疫学を理解するうえで調べたことを述べていきたいと思います。

一言で免疫と言っても、どこから述べていけばよいのかわかりませんが、免疫反応の中心のひとつは、リンパ球なのです。このリンパ球が活発に働かなければ、免疫力はアップしません。

では、このリンパ球を活発にするためのエネルギー源(栄養分)は何なのでしょうか。

ここから説明していきたいと思います。実は生魚、生卵に多いグルタミンが、リンパ球を活発にするためのエネルギー源なのです。

つまり腸管免疫力を高めるために、一番意識して摂りたい成分は「グルタミン」です。

体が弱った時は食事からの摂取が必須

グルタミンは、タンパク質を構成するアミノ酸の一種で、私たちの身近にある食品では、生魚、生肉、生卵、発芽大麦などに豊富に含まれています。

この成分は、かつては「体内で合成できる非必須アミノ酸」つまり、体内にあるものの合成で必要量をまかなえ、食事からの摂取が必ずしも必要ではないアミノ酸と考えられていました。しかし、最近、「ある種の条件下では必須となるアミノ酸」であることが解明されてきています。

どういうことかと言うと、健康な状態であれば、体の中にある他のアミノ酸や筋肉などのタンパク質を使って、人は必要な量のグルタミンを合成できます。私たちの体の中では、毎日、この合成がおこなわれているのです。

しかし、風邪やインフルエンザなどによる発熱、無理なダイエットなどによる栄養不足、がんなどの重い病気、外傷、手術後など、体がストレスを受けた状態、さらには過度の運動後(マラソンランナーなど)では、体内で必要な量を合成できなくなります。

さらに、このような状態では、体が筋肉を崩壊させてグルタミンを作ろうとするので、健康維持のために大切な筋肉までもが崩壊するリスクが生じます。そのため、「ある種の条件下では必須となるアミノ酸」とされるのです。