人体最大の免疫機関を動かす栄養分
グルタミンの重要性が発見され、その働きが解明されるまでには、学者によるさまざまな調査研究がありました。現在までに明らかになっているグルタミンの働きをまとめると、次の5つが挙げられます。
①小腸粘膜細胞の最大のエネルギー源になる。
②大腸粘膜上皮細胞で2番目に重要なエネルギー源になる(1番目は酪酸=食物繊維が分解されてできる成分)。
③リンパ球などの免疫細胞の発育と増殖を促して、免疫力を高める。
④抗うつ作用がある。
⑤傷口が治るのを促進する作用がある。
なかでも注目すべきは、①、②、③の作用です。
小腸には免疫を担う全身のリンパ球の60パーセント以上が集中しています。その人体最大の免疫器官である腸を動かす栄養分となり、さらにリンパ球そのものの栄養分にもなるのが、グルタミンです。
そのため、体内のグルタミンが不足すると、免疫力も低下してしまいます。逆に、グルタミンを意識して摂っていると、病原菌の侵入などの異常事態が起こったときにも免疫機能が活発に働き、病気になりにくいのです。
グルタミンと一緒に摂りたいグルタミン酸
グルタミンの働きを詳しく説明しましょう。
まず、①の「小腸粘膜細胞の最大のエネルギー源になる」についてです。「エネルギー源」と聞くと、ブドウ糖を連想する人も多いでしょう。確かに、糖質(炭水化物)が分解された最小単位であるブドウ糖は、人の体の主なエネルギー源です。
しかし、ブドウ糖は、腸管のエネルギー源としてはあまり利用されない、と考えられています。小腸のエネルギー源の割合でいうとブドウ糖は約5~7パーセントにすぎません。
ブドウ糖に代わり、腸管、特に小腸の最大のエネルギー源になるのが、グルタミンです。その割合は全エネルギー源の約50~60パーセントを占めています。
食事から摂取したグルタミンは、小腸で吸収され、免疫機能が集中する小腸粘膜細胞でエネルギー源として使われます。グルタミンが全身の血液循環に入ることはほとんどなく、腸以外の組織では利用されないのです。
たとえば、私たちが食事を摂らずに長期間絶食すると、小腸の粘膜上皮が萎縮し、絨毛の高さが短くなります。それにつれて腸関連リンパ組織(GALT)のバリア機能が衰え、全身の免疫力も低下してきます。
これは、絶食によって、小腸粘膜細胞のエネルギー源となるグルタミンの供給が断たれた結果なのです。この状態が続くと、腸管にある病原菌や毒素が血液中に移行しやすくなり(バクテリアルトランスロケーション)、全身の血液循環に病原菌などが入って、病気につながります。
また、このメカニズムでグルタミンとともに働くのが、名前がよく似ている「グルタミン酸」です。グルタミン酸は、小腸の酵素などによってグルタミンからも分解されますが、食品としては、昆布、鰹節、干ししいたけなどに含まれ、和食の「旨味」を作る成分です。グルタミンと一緒にグルタミン酸も意識して摂ると、腸管の働きがますます高まります。