対外から侵入した病原菌対策にも欠かせない

グルタミンの特徴として挙げた、②の「大腸粘膜上皮細胞で2番目に重要なエネルギー源になる」というのも、重要な働きです。

大腸の最大のエネルギー源は、食物繊維が分解されてできる酪酸ですが、その次がグルタミンです。酪酸やグルタミンは、小腸粘膜細胞と同じように、大腸の粘膜上皮が円滑に働くエネルギー源となり、そのバリア機能を増強します。

つまり、グルタミンは小腸で1番目、大腸で2番目のエネルギー源となり、腸全体で見ると、「腸管最大級のエネルギー源」といえるのです。

さらに、③の「リンパ球などの免疫細胞の発育と増殖を促して、免疫力を高める」という働きも、大きなポイントです。グルタミンは小腸粘膜細胞だけでなく、小腸に集中する免疫細胞の栄養分にもなります。つまり、体外から侵入した病原菌など病気の元凶を攻撃して無害化するリンパ球やマクロファージなどが発育・増殖するための栄養になるのです。また、病原菌(抗原)を攻撃するIgA抗体の量を保つ効果があることもわかっています。

グルタミン
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マラソン選手がグルタミンのサプリを摂るワケ

マラソンのランナーが、競技終了後に風邪を引きやすいという報告がありますが、これは過度の運動によって、体内で必要な量のグルタミンを合成できなくなったことによる免疫力の低下が関わっていると考えられます。これを防ぐために、競技後にグルタミンのサプリメントを摂る場合もあるようです。

グルタミンのこのような働きを最初に発見したのは、オックスフォード大学のエリック・ニュースホルム博士です。博士は、リンパ球とマクロファージの働きがグルタミン濃度の異なる環境でどう違うかを研究し、グルタミン濃度が低い環境では、リンパ球が正常に分裂しないことと、マクロファージの働きが低下することをつきとめました。逆に、グルタミン濃度を高めると、リンパ球が活発に細胞分裂を始めて増殖し始め、マクロファージの働きも活発化しました。

グルタミンは、免疫細胞そのものの数と働きにも関わっているのです。

少し、話が専門的になりますが、グルタミンに関する近年の研究成果として、「GFO療法」を紹介しておきましょう。