※本稿は、マグナス・ウォーカー『URBAN OUTLAW』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。
7500ドルで中古のポルシェ911を購入
誰もが俺に訊きたがるのは277のことだ。本当のことを言えば、ちょっと妙な話だ。その車には、俺の特徴的なタッチはほとんど加えられていないのだから。
だがそれでも人気は高いようで、雑誌やウェブサイトにコレクションの写真が掲載される場合、必ず検索結果の上位に入る。277は二台目に買った911で、世界に1台しかない、いろいろなパーツを組み合わせた車だ。マッチングナンバーの既製の車が趣味なら、911としては不満を覚えるだろう。
初めて71年型の911Tを目にしたのは、その種のイベントとしては世界最高の1999年のポモナ・スワップ・ミートだった。無数の車が揃っているし、オイルとガソリンの匂いが充満していて、時折タイヤのきしむ音がする。そこかしこで車に関する熱心な会話がかわされ、空気はエネルギーに満ちてざわついている。
277の元所有者は航空宇宙工学の専門家で、ロッキード・ボーイングで働いていたとのことだった。俺は7500ドル出して、改造済みのその車を買った。2.7リットルのエンジン搭載だったが、車体は細身で、パーツも加えられていなかった。もともと金色だったのだが、緑色に塗り替えられ、そのあとで色合いもさまざまなホワイトに塗られていた。コンディションは良く、そんなわけで俺はそいつを手に入れたのだった。
すぐさま73年RSレプリカ式に改造を始めた。実際にその型の車に惹かれたことはない。車は1580台製造され、277は7500ドル出して買ったが、おそらく73年RSは5万ドルした(この原稿を書いている今では、状態のいいRSはおそらく100万ドルする)。要するに当時5万ドルは、俺にとって100万ドルくらいの意味があった。1万ドル以下が、予算の範囲だったからだ。
結局本物のRSフレアを750ドルで買い、所有して3カ月も経たないうちに車に溶接した。そのあと73年RSカレラのファイバーグラス・ダックテールを入手し、車体をホワイトに塗り直し、ブラックのフックスを加えた。半年も経つと71年型Tは、73年RSのような外見になっていた。