馬力の強いエンジンがいいわけではない

車は四気筒で、4つ目の2.6リットルのエンジンは何度も手が加えられていた。1つ目の2.7リットルは、車を手に入れたとき少々参っていたので、中古で手に入れた2.4Sスペックのモーターと交換した。やがてそのエンジンもちょっと弱ってきたが、そこまで金をかけるつもりはなかった。

3万ドルかけて、でかいエンジンを入れるまでの心づもりはない。俺はいつもネットで中古のエンジンを探す。そんなわけで、8000ドルで手に入れた2.5リットルのエンジンをつけた。俺はただの車好きだ。2年ほど乗り回し、エンジンが弱ってきたら取り替える。くたびれて漏れもひどくなってくると、修理するかわりにネットに広告を出す。

「即使えるエンジン求む」

洒落たものである必要はない。理想的なのはショートストロークでツインプラグの2.4、2.5、2.6あたりだ。でかいものが欲しいと思ったことはない。エンジンのスペックを細かく知っている必要もない。エンジンが参ってきたら、すぐ交換できれば満足だ。べらぼうに馬力が強いエンジンを求めているわけでもない。俺にとって、ポルシェとはそういう車ではないのだ。

ターボにかける情熱。76年と77年の930ターボ、待機中
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すぐに変化が実感できるから、3.2、3.4、3.6、3.8など、でかい心臓を取り付けるのが趣味の連中もいる。だが277は小型で瞬発力のある車で、そういった車のほうがドライバーの技量は上がると俺は思っている。昔、サーキットでは速い車を追うのが好きだった。そうしたら自分のペースも上がったからだが、コーナーで追い抜くと、こんなことを言われることもあった。

「3.6リットルを取り付ける気はないのか? ちっぽけな心臓でちょろちょろ走りやがって」

でかいエンジンをつけたからといって、速くなるわけではない。俺の場合、物理的に自分の足を277のショートストロークで、ツインプラグの230馬力の2.6リットルのエンジンに載せておくことはできないのだ。300馬力なんて欲しいわけがない。小型の車にでかいモーターをつけて速度が上がるわけじゃない。そのままの状態でバランスはいいし、調子は整っているのだ。

俺は277を「偏平足の車」と呼んでいる。ほとんどのあいだ、アクセルを踏み続けていられるからだ。ばかでかいエンジンをつけた車では、そんなことをしているわけにはいかない。単純に相手の力が強すぎるのだ。277はそれができるから、気に入っている。

277はたいして特別な改造を施していない

2006年頃、ブルモスに影響を受けたリバリーは今よく知られているスタイルに進化した。もともとのリバリーが入ったスチールのボンネットを、成り行きで赤いファイバーグラスのものに変えたときだ。わざわざ塗ることもない。ただ取り付けるだけで格好いいだろう、と思っていた。そのあとでバンパーをブルーに塗り、ホエールテイルをルーバー付きのデックリッドに交換した。

今でもその車はトーションバーとショックをつけて走っている。コイルオーバーには改造しなかったのだ。もとのスチールのトレーリングアームをつけて走っている。軽量のアルミのアームにはアップグレードしなかった。ブレーキに関してはSCブレーキにしたのだが。

これまた妙な話で、世の中の人間の大半は重いターボブレーキにアップグレードを繰り返す。だが車が2200ポンドしかない場合、そこまでブレーキの馬力は必要とされない。タイヤは粘着力が高く、路面をガッチリつかむ超優秀なフージャーだからだ。

要するに277のパーツは、とりわけ現在のスタンダードからしたら、たいして特別でもない。実際何年もかけて改造したので、多くのパーツは今や古色蒼然たる代物だ。だから最新式の超一流の目を見張るようなレーシングマシンなんかではない。もっとベーシックで、はっきり言って古い手法の改造車だ。